8月7日(木)鴇田峠へんろ道を通って久万高原へ

内子町田渡 国道379号から県道42号へ
内子町田渡 国道379号から県道42号へ

鴇田峠へ

 

 前回は,農祖峠を越えました。地図で見る限りこちらの方が平坦です。2回目ですから,前回とは違うルートで行こうと思っていました。宿のご主人に聞いても,

「みんな,鴇田峠へいきます」

 と言われました。

内子町倉谷
内子町倉谷

 国道379号から県道42号線に入ります。その分岐までは負担もたいしてなく,ゆったりと歩けました。でも今思えば,ここからがこの日の峠の連発が始まる序曲でした。

 鴇田峠のまえに,県道42号線に下坂場峠がありました。この峠も結構きつい峠でした。その後に鴇田峠。

下坂場峠へ
下坂場峠へ

逆打ち

 

 鴇田峠で逆打ちのお遍路さんとすれ違いました。逆打ちというだけでステージは数段階上,尊敬の対象です。声をかけるのも遠慮します。すれ違ってから数秒して,思いきって声をかけました。

「逆打ちですか?」

「おうよ」

 逆打ちへんろさんは,振り返ってくれて,意外に親身に返答してくれました。

「こっち(鴇田峠)は,きついですね」

 と,わたし。

「こっちしかしらないけど,あっち(農祖峠)は,どうなん?」

「あっちは,ぜんぜんへいきです」

「あっちは知らないから,知っている方がいいと思って,こっちを来たけど」

 

鴇田峠で出会った逆打ちおへんろさん
鴇田峠で出会った逆打ちおへんろさん

逆打ち

 

 わたしより何歳か年上なんでしょう。が,見かけも動きもはつらつとしています。”へんろ”をよく知っているからでしょうか。とにかく,背負っている荷物が少ないのに脱帽です。

「背負っている荷物は煩悩の大きさ」

 そう教えてくれたへんろさんがいました。それはまったくの真実であることを,その後何度か実感しています。

 

44番「大宝寺」山門前にて
44番「大宝寺」山門前にて

44番「大宝寺」

 

 大宝寺を打ち終えて次の札所へ向かうへんろ道はまた結構な峠を越えることになります。峠の名前はありませんが,延々と上り坂が続きます。いっそのこと峠を回避して,県道を回り道した方がいい,そんなふうにも思えました。

 ここから45番岩屋寺まで,8.4kmと案内地図にはあります。8.4kmならそんなに遠くはありませんが,地図からは上り下りは正確には読み取れません。急激に上って,直後に下って,また上る。44番大宝寺から45番岩屋寺のルートは,実にその繰り返しでした。地図上の距離の倍以上の負荷があるように思いました。

45番「岩屋寺」の奇岩
45番「岩屋寺」の奇岩

45番「岩屋寺」

 

 岩屋寺を県道12号線側から上ることになりました。県道からすぐに山門がありますが,そこからの道のりが長くきつい坂が続きます。

 偶然,タクシーの運転手さん二人といっしょに上ることになりました。

「さすが,すごいですね」

 そんなこと言われると,”あるきへんろ”としては頑張らざるをえません。

「同じですよ。気張ってあるいた後は休憩しなければならないんです」

 でも,わたしの自尊心は,わたしの限界を超えて歩くことを要求してしまいました。

 このときの無理が大きなしっぺ返しを生むということをそのときはまったく思いもよりませんでした。すぐ調子にのってエエカッコしてしまいます。いままでいろいろ痛い目を見てきたのに,そうした習性はなかなか治りません。

 

いくつかありました。
いくつかありました。

平家之供養塔

 

 この地,瀬戸内地方は源平の紛争地域なんだなと思わされます。結構新しい墓石のように見えますが,いまでも平家の末裔がこの地に存在するのでしょうか。同じような墓標を近くでも見ました。

 

長い上り坂

 

 県道12号線を久万高原町に戻ります。古岩屋からの上り坂は延々と続き,本当にうんざりしました。前方に見える頂点が上り坂の終わりだと思って歩いていくと,その上にまた上り坂が表れます。あれが頂点だろうと思ってまた進むと,さらにその上に上り坂,この繰り返しが何回あったでしょうか。本当に長いだらだら坂でした。一気に登る急坂も大きなダメージですが,いつまでも果てることのない道のりも大きなダメージになります。県道12号線は,そんな道でした。

アルミホイールデコ軽トラ3台
アルミホイールデコ軽トラ3台

 

軽トラアルミホイール,3車両

 

 ある企業の従業員の駐車場だと思います。軽トラックが3台,なんでもない風景のように思われますが,よく見ると3台ともきれいなアルミホイールをはいています。1台,2台ならまだしも,3台そろうとちょっとしたトピックスです。思わず写真を撮ってしまいました。

 

親切なんだけど,愛想のないおかみさん 

 洗濯した後,疲れ切って部屋でごろごろしていたら,

「洗濯物,乾燥機に入れておきましたよ」

 親切にサービスしてくれました。素泊まりでしたが,

「トマトは好きですか? トマト持ってきたんですけど」

「トマト,大好きです」

 実は,トマトはそんなに好きではないのですが,思わずいってしまいました。プチトマトを10個ほど,差し入れていただきました。コンビニ弁当といっしょに食べました。そのトマト,不思議にいつものトマトの何倍もおいしくいただきました。

 おかみさんはたぶん神経質な方だと思います。

「杖は,手で洗ってから,タオルでふいてください」

「杖は,そっちに置いてね。畳に直接置かないでください」

 細かい指示にちょっといらっとしましたが,言われていることはもっともです。神経質なんだけど,いい人でした。翌朝の出発の時も,ちゃんと5時に玄関を開けておいてくれました。 

 おもご旅館は44番「大宝寺」の門前にあります。

 

本日の歩行距離 42.2km