藤井家で心のこもった接待をいただきました。
30年ぶりに会った同級生。 瞬時に相手を特定,というわけにはいかなかった。 お互い顔を見合わせて,「・・・・・・だよね。」と,心の中でつぶやいていた,と思う。 私の菅笠と金剛杖は大きなヒントになったはずだが。
ご主人は,意外といっては失礼だが,若かった。 若く見えるのだろうか,なかなかかっこいい。 へんろの武勇伝を聞かせていただいた。 若いときのことではあるが,そんな速さで回れるなんて,わたしには考えられない。
猛暑,気温38度
菅笠はどっちが前だったっけ。 1番で買ったときに教えてもらったのだが, どっちも前のような気がする。
国道55号線を歩く。 この後,うんざりする程この路線とつきあうことになるのがだ,そのときはそこまで思いは至らない。 へんろを再開できた喜びと,新しい道を歩き始める新鮮な気持ちをすがすがしく感じていた。 この時は・・・・・・。
前向きな思いが萎え始めたのは,そんなに経たないうちである。 体が重いのは,夜行バスでしっかり寝られなかったからだろうか, 息が上がるのは,雲一つない青空から降り注ぐ日差しのせいか。 日陰はほとんどない。コンビニも自販機もない。民家もまばらである。 次の自販機まで歩こう。そこで,思い切り冷たい○○を飲もう。
何でもいいからいっぱい飲もう。そう念じながら歩いた。しかし,いつまでたっても,何もない。逆に「ただいまの気温38度」という案内に出くわしたときには本当に疲れがピークにきた。 牟岐町に入る手前だった。
携行食はやっぱり・・・
暑さと渇きと空腹でエネルギー残量ゼロ状態に。 ベンチに座って,清涼飲料水をいっぱい飲んで休憩。 休憩は大事ですよ。10分の休憩は,60分の歩行力を復活させる。 ただ,空腹は休憩だけでは満たされない。
ここで初めてカロリーメイトなるものを買って,食した。 チョコレート味という触れ込みのものだったが,はっきり言って,まずい。 携行食としての自分のお気に入りは,第一にピーナッツ,次にチョコレートである。 このときはそれらを持っていなかった。小さな失敗。 結局,半分残ったカロリーメイトはこのへんろ旅の最後まで,保存食としてわたしといっしょに歩いた。
初めての納経は鯖大師
牟岐駅前でやっと出会った食べ物屋。 やっと手に入れた冷風空間,でもある。 15kmぐらいしか歩いていないのに完全にバテていた。 「歩き始めはみんなそうだよ。2,3日たつと体が慣れてくる。」後で知り合ったへんろさんがみんなそういってくれた。 結局このラーメン屋に1時間近くいた。
隣のテーブルには,今回初めてであったへんろさんがいたが, この若者とは一度も話す機会がなかった。
今回の初めての納経は鯖大師。 納経帳に書いてくれたおかみさん(だと思う)にオレンジジュースを接待していただいた。
稲刈りがあるでなぁ
民宿「谷口」に電話をする。
「次の日の朝早く出たいのだけれど,何時から朝食ができますか?」
「明日は稲刈りがあるからなぁ。でも,何時でもいいよ。」
「5時ぐらいでもいいですか?」
「うぅーん,何時でもいいよ。明日来てから決めればいいよ。」
鷹揚ですごく感じのいい対応だった。これだからへんろ宿はありがたい。稲刈り,というのも実に民宿っぽくって,いい。 しかし,結局この「谷口」は翌日キャンセルしてしまった。おじさん本当にごめんなさい。へんろって,いろんな人に迷惑をかけてしまいます。