8月12日(日)

大岐海岸
大岐海岸

 

右足の痛み

 

 朝4時50分に出立した。おにぎりは前日同様夜のうちにもらっていた。海岸沿いの国道を歩く。朝は涼しく,いつ歩いても気持ちがいい。ただ,右足の膝の裏当たりがひどく痛むようになってきてしまった。痛み始めたのは昨日からだが,筋肉痛かなんだかよく分からなかった。痛みが激しいので歩行があまりはかどらない。ちょっと遅れてたった滋賀のお兄さんにすぐ追いつかれた。

大岐海岸へんろ道
大岐海岸へんろ道

「おはようございます。お先に行きます。」
歩きへんろは絶対にと言っていいが,いっしょに歩くということはしない。さっさと追い抜いていった。あの速さなら4時間22㎞はいけるかもしれないな。今日の土佐清水までも余裕でしょう。

大岐海岸へんろ道
大岐海岸へんろ道

 右足が痛い。ちょっとゆっくり目に歩く。ただ,痛みというのは不思議なもので,歩いているとその痛みに慣れてくるのかだんだん痛みが引いていく。マメの傷みもそうだが,いちばん痛いのは休憩直後の歩き始め10分間である。その後はどんどん痛みはなくなり,30分ぐらいたつと嘘のようになくなる。治ったわけではないので歩けば症状は進んでいくはずだが,とりあえず調子に乗って歩けるようになる。

大岐海岸へんろ道
大岐海岸へんろ道

 

 

大岐マリンでへんろ道

 

 大岐マリンでへんろ道に入って失敗。砂浜沿いに行くのが正しかったらしいが,道を間違えて防風林の中に入り込んでしまった。日差しの入らない暗く湿った道にはときどきカニの大群が現れた。近くに国道があり不安はあまりなかったが,ほとんど人が通らないので,虫たちが喜びそうな陰気な湿り気と不意に顔をなでる蜘蛛の巣が大変不快だった。

大岐海岸へんろ道
大岐海岸へんろ道

 衣布利では漁港を通り抜け,海岸の石ころの上を歩いた。海水が引いていった跡が確かにあるが,満潮の時はどこを歩くんだろう。その後は急な坂道。
 窪津漁港のへんろ道は急なジグザグ階段。背負った荷物が重い。これだけ苦労すれば上がったときの景色はさぞかし,と期待するのが人情というものだが,見事にその期待は裏切られた。

大岐海岸へんろ道
大岐海岸へんろ道

 へんろ道はいろいろである。へんろ道を通らなければ価値がないと考えているへんろさんもいるが,国道を通るかへんろ道を通るか,私はその都度決断することにしている。へんろ道を通ってよかったなぁと思うとき
1 木陰が続き,涼しいとき。
2 ショートカットできたとき。
3 いい雰囲気が味わえたとき。
 どれも該当しないときは心底後悔することになる。加えてへんろ道が急な上り坂だったり,足場か悪い下りだったりしたときには,自分の選択ミスを呪うことになる。

 

 「金○庵」(真ん中の字を忘れた。)というへんろ接待所があったので休んだ。水道があったので水をいっぱいいっぱい飲んだ。ペットボトルにも詰め込んだ。若いお兄さんがいた。この接待所に関係ある人なのかどうかよくわからなかったが,納札をどうしようかまた迷ってしまい,結局出せなかった。気まずかったな。
「接待を好きなだけ受け,納札も出さずに,さっさと立ち去った図々しいへんろだ。」
なんて思われただろうか。「へんろエゴ」という言葉が頭をかすめた。

足摺岬 ジョン万次郎像
足摺岬 ジョン万次郎像

 

 

足摺岬と金剛福寺

 

 足摺岬に着いた。ジョン万次郎のゆかりの地だったのか,ここは。万次郎と一緒に写真を撮った。

足摺岬 灯台
足摺岬 灯台

 展望台から灯台の建つ絶壁を眺めた後,茶店に寄りかき氷を食べた。「暑いときはキューッと一杯のビールがおいしいね。」などというのはふつうに暑いときにふつうに生活している人の思いである。ひどく暑くひどく暑くなるようなことをしているときは,ビールなんてほしいとは思わない。かき氷が一等おいしい。冷たさと甘さがこんなに体を癒すなんて,ここに来るまで知らなかった。

足摺岬でかき氷を食べる
足摺岬でかき氷を食べる

 足摺は観光地だ。土産物屋もあればレストランもある。足摺の前後は何もないところだけれど,足摺だけは観光地だった。にぎわっていた。その点は室戸岬と大きく違っていた。室戸岬にはほとんど何もなかった。

38番「金剛福寺」 土佐清水市足摺岬
38番「金剛福寺」 土佐清水市足摺岬

 38番金剛福寺,今回初めての納経を果たした。久しぶりだったという言い訳をしておくが,般若心経を読み間違えた。やっぱり暗唱は避け,ちゃんと読んだ方がいいな。

38番「金剛福寺」納経所
38番「金剛福寺」納経所

「歩いて見えるの?ちょっと待ってね。歩いている人に接待。」
と,納経所の人にお茶(パック)をもらった。ありがたい。
 納経後門前のレストランでカツ丼を食べた。カツ丼はおいしかったが,冷たい水はもっとおいしかった。

白川洞門
白川洞門

 

 

民宿夕日まで
  

 足摺を後にして県道を少し歩いた後へんろ道に入る。きついへんろ道だった。上りは急な長い坂,下りはもっと長く続くだらだら坂。いつまでたっても県道に出ない。

間違ったへんろ道 まっすぐが正しい道
間違ったへんろ道 まっすぐが正しい道

 何度も何度も不安になった。しかも一度道を間違えて戻った。
 へんろ山道で道に迷ったら恐怖である。今回は50mほど戻っただけで正しい道を発見できたからよかったものの,100m,500mと戻ってもへんろ札が発見できなかったとしたらと思うとぞっとする。だから,山道ではまっすぐ前を向いて,へんろ札を見逃さないように歩くのが基本だが,足場が悪かったり,蛇などの危険が感じられるような道だったりすると,どうしても下を向いて歩くことになってしまう。へんろ札を見落としやすいのはそういうときである。なかなか難しい。

民宿夕日 土佐清水市松尾
民宿夕日 土佐清水市松尾

 民宿夕日はへんろ宿というよりペンションという雰囲気だった。一緒に止まった人たち(夫婦2組)もふつうの観光客だった。一組の夫婦は横浜から飛行機で松山空港まで来たと言っていたな。
洗濯料金200円。
「疲れていてかわいそうだから,洗って干しといてあげる。」とおかみさんの接待。それで200円は高いか安いか?