7月27日(月)女体山越えで大窪寺。県道2号で阿波市へ。


4時出発,真っ暗の県道2号


 前山ダムまでおよそ5km,1時間強だからそのちょっと手前で明るくなるという計画で出発しました。

 そこまでは県道をまっすぐ歩くだけだから道に迷う心配はありません。

 女体山越えをするにしても前山ダムの先に山道に突入することになり,そのころにはもう明るくなっているはずです。

 街路灯でできる自分の影を撮ってみました。


県道コースか女体山コースか


 歩き出してからもまだ迷いました。女体山越えはかなりきついと聞いています。今日は88番から先へもずいぶん歩かなければなりません。

  大事をとって県道コースにするか,後悔しないように女体山越えに挑戦するか,迷いました。

 先の分からないへんろは常に迷いと決断の連続でもあります。両方をとるということは絶対にできません。

 ただ,両方を同時に経験できないので,「あっちの方がよかった」という判断もできません。自分が選択した方しか分からないのです。大袈裟に言えば人生だって同じ,と言えるかもしれません。


女体山越えに決定


 女体山越えに決めました。理由ははっきりしたものはありません。何となくそういう気分になったとしかいえません。

 前山ダムには予定どおり,明るくなって到着しました。前山おへんろ交流サロン通過が5時5分,早すぎて開いていませんでした。前回はここで歩きへんろだけがもらえるという「遍路大使任命書」をいただきました。今回はそのまま通過です。


民家の庭にポツンと立っていたおじさん


 わざわざわたしのために立っていてくれたのかもしれないと思いました。周りにはだれもいません。

  山道に入るポイントを探していました。地図を見ながら歩くので,左のわき道に入ることは分かります。

 でも,土地勘がないものが地図を見ると距離が正確には掴めません。

 通り過ぎちゃったのかもしれないと不安になっていました。そういうときはえてしてへんろマークも見つかりません。

 そんなときに立っていたのがおじさんです。「ああ,あれはお大師さんかもしれない」,本当にそう思いました。

「この先150mぐらい行ったら左斜めに入る道があるよ」


山道はきついけれども涼しい

 

 上り坂は楽ではありません。でも上を見ると,木が生い茂り木陰に包まれて歩くことができます。

 木々の真ん中,中天にくっきりと青空が見えますが,日差しはしたまで下りてきません。涼しい中,気持ちよく歩くことができました。


蛙とミミズ,ミミズと蟻と


 山深いへんろ道は草や落ち葉で覆われて日差しも届かず湿っています。季節柄マムシがでると怖いので,杖で探りながら下を向いて歩きます。

  そのときいきなり目に飛び込んできたのがミミズ,そして今まさにそのミミズを捕らえた大きな蛙でした。

 ウシガエルでしょうか,ソフトボールぐらいの大きさがありました。

 蛙はミミズを口にくわえてじっとわたしの方を見つめたように思いました。山の中,人は誰もいないけれども、さまざまな生き物が生きています。

 そのあと見たのが,大きなミミズにたかる蟻の大群です。蟻も一所懸命に生きています。


女体山山頂からの展望


 素晴らしい眺望でした。山頂に至る直前の崖上りがちょっと非常識なぐらいのルートだったので,山頂に着いて,下界を見晴らしたときは喜びが倍加しました。

  せり出した岩に立ってみた行きもしましたが,ここで落ちたら,しばらく誰も助けてくれないと思うとそんな冒険はできませんでした。

 よく晴れていました。上るまでは日差しを受けることなく上れたので,いきなり明るい日差しの中に躍り出たようで,最高の気分になりました。頑張って上ってきたご褒美が明るい景色でした。ありがたく感じました。


やっぱり下りはきつい


 大窪寺への下りは長く続く急な階段がほとんどでした。コンクリート造りの丸太を並べた階段です。段差が大きいので一歩一歩の衝撃が足や膝に大きなダメージを与えます。

 膝を痛めないようにゆっくり足を運びました。 

 つづら折りの階段を何階も何階も回り,少しずつ下に下りていきます。なかなかしたが見えてきません。終わりかなと期待すると,さらに右へ,左へと回り込みます。終わりが見えないという精神的なダメージも小さくはないと思いました。


大窪寺に着いたらにわかに雲が


 それまでよく晴れていました。

 大窪寺の大師堂でお参りをしているときは,きつい日差しでクラクラするぐらいでした。

 ところがそのあと,境内で持参したパンを食べ,腹ごしらえをしているとだんだん曇ってきました。

 そのあと,門前のお土産やさんでかき氷を食べ,冷たい麦茶をおいしくいただいてゆっくりしていたら,だんだん空模様が怪しくなってきました。

「雨が降ってくるかもしれないね」

 売り子のお姉さんにそういわれてびっくりしました。


天気に助けられた


 かき氷を食べている間に全天雲だらけになってしまいました。そして結局その日は夕方までくもりのままでした。

  大窪寺から阿波市の切幡寺近くまでは,延々と県道を歩きます。

 晴れていれば日差しから逃れるすべはほとんどありません。

 ところが幸いにもずっと日陰を歩くことができました。遠い道のりで時間はかかりましたが,大いに助かりました。

 女体山山頂ではきれいに晴れ,歩くときは木陰を歩くことができました。県道では日ざらしになるはずのところを,うって変わって雲に守られました。たいへんラッキーな天候でした。

 何もない

 

 県道2号線は香川県から徳島県阿波市に向かってなんかします。

 はじめ数kmは本当に何もない道でした。人家も,自販機もありません。

 海は見えませんが,室戸岬に向かう国道55

号線と同じです。そこまで何もないとは思いませんでしたので,びっくりしました。久しぶりに遠くに赤い自販機が確認できたときは,大いにホッとしました。

 と,同時に,こんな誰もいないところにも自販機があるんだ,そんな不思議な風景でもありました。