8月11日(木) 20番「鶴林寺」~22番「平等寺」

20番「鶴林寺」登山口にあった杖のお接待
20番「鶴林寺」登山口にあった杖のお接待

 

杖のお接待

 

 たくさんの人のお接待によって「へんろみち」が成り立っています。お接待小屋や善根宿も満ち満ちにいくつもあります。へんろ道の案内札は至るところにあります。

 鶴林寺の登山口には杖が置いてありました。山に登るとき,足2本で登るか3本で登るかは大きな違いです。

右部分だけ設置されていた階段 6年前はありませんでした
右部分だけ設置されていた階段 6年前はありませんでした

 また,ブッシュに入ったとき草をかき分けたり,蛇などの危険を避けたりするのにたいへん有効です。

 また,登山道は前回来たときにはなかった階段が造ってあり、格段に登りやすくなっていました。一部アスファルトで固めた階段もありました。 

 

 へんろ道案内の道しるべは本当にたくさんあります。そういう夥しい数の道しるべを作ってくださる無数の人の力を借りて,私のような生半可なへんろでも何とか歩けているということを,実感します。 

20番「鶴林寺」境内
20番「鶴林寺」境内

 

山道と水

 

 水をどれだけ持って山に入るかはなかなか悩ましい問題です。山は木陰があるので,国道の炎天下を歩くときほど脱水症状に悩まされることはありません。しかし,いったん山に入ると,水を新たに得る手段はほとんどありません。売店や自販機はもちろんありませんし,湧き水もそうそうあるわけではありません。

 私は,500 ml のペットボトルを2本持っていくことにしています。たくさんあればそれに越したことはないのですが,その分重くなってしまいます。2リットル持っていくよ,と言われた人がいましたが,そうなると2 ㎏ 余分に担いでいかなければならなくなります。

 中身は水がいちばんです。気分転換にときどきお茶,本当に疲れたときは自販機でスポーツ飲料を買いますが,山に連れて行くのは水かお茶にしています。

 

鶴林寺には自販機がない

 

 たいていの札所には自販機の一つや二つはあります。

「自販機はないよ。水が下山口のところにあるから汲んでいきなさい」

 鶴林寺では,納経所のおじさんにそういわれました。 

21番「太龍寺」へ 登山道
21番「太龍寺」へ 登山道

 

野宿へんろ

 

 太龍寺に着くと若者がひとりベンチで休憩していました。野宿しながら回っていると,そのたいへんさをいろいろ聞きました。

「夜はほとんど寝られない。車の音で起きてしまうんです」

「一度公園の電灯がみんな消えて真っ暗になってしまったことがあるけど,真っ暗は,ほんと,耐えられませんよ」

「洗濯したい。風呂に入りたい」

「コインランドリーは良かった。鶴林寺のふもとの道の駅に,昨日,泊まったけれど,快適でした」

「僕,大量に水を飲むんです。3リットル持って登ってきました」

「焼山寺はそれほどでも,山登りには慣れてましたから,5時間で登れました」

 私の焼山寺登山は5時間45分でした。5時間で登るのはすごいと思います。

「でも,鶴林寺の下りでは1時間もかかっちゃいました。納経所のおじさんには,2時間と軽く言われましたが,たっぷり3時間かかりました」

 そう,私もそのおじさんに「2時間もあれば,いくよ」と軽く言われました。でも,太龍寺登山もたいへんでした。

21番「太龍寺」工事中で本堂前に入れず。 足跡を残しちゃいました。
21番「太龍寺」工事中で本堂前に入れず。 足跡を残しちゃいました。

 

工事中と足跡

 

 「本堂は工事中でした」と野宿の若者が行ったとおり,本堂前には行けませんでした。「ここからお参りしてください」と張り紙がしてありましたが,トラサクに向かって般若心経をあげる気持ちにはなれませんでした。その分,大師堂で気持ちをこめてお勤め,したことにして太龍寺を去りました。

 太龍寺の下りはアスファルトの道がダラダラと続きます。厳しい道ではありません。ピーナッツをほうばりながら気楽に歩みを進めました。

 と,山門を出てすぐのところで,

ズボッ!

 足元を見るとそこには塗り立てのコンクリートがありました。決してわざとではありませんが,きれいに足跡を刻印してしまいました。

追い越していった自転車お遍路さん
追い越していった自転車お遍路さん

 

山が鳴る

 

 あれは何だったんでしょうか。風を受けた山の木々があの音を作りだしているんでしょうか。

ゴォォ〜,ゴォォ〜,ゴォォ〜,と

 低い,唸るような音,はじめは山の向こうに高速道路が通っているのかと思いました。どんなに観察しても道路はおろか,人工の建造物はありません。

 注意して聞いていると,海鳴りのようにも聞こえました。もちろん,近くに海はありません。

 自転車のおへんろさんが追い越していきました。のぼり道は歩きへんろ以上にきつそうです。 

22番「平等寺」へ 大根峠
22番「平等寺」へ 大根峠

 

3つの山(峠)

 

 鶴林寺に上って下りて,太龍寺に上って下りて,大根峠に上って下りて,今日は3つの山(峠)を越えました。 
 上りはどれも似たような坂でした。急な坂道や階段がずうっと続きます。ここでは体力だけがものをいいます。もともと,そうした苦行は求めるところでもありますから,不満はありません。それに,青シャツのお大師様のおかげで,のぼり道が好きになってきました。 
 翻って下り,下り道はそれぞれ違いました。

 鶴林寺は急坂の階段,ガレキ道が続きます。たいへん歩きにくく,足へのダメージも大きかったと思います。太龍寺からの下りは,だらだらと続くアスファルト道路,車が1台通れるぐらいの幅です。ほとんど車が通ることがなかったので,気楽に歩けました。大根峠は木陰の中のゆるい下り道でした。山の中の木陰は涼しく,歩きやすい道でした。 
 下り道としては,大根峠がいちばん,鶴林寺は最悪でした。

22番「平等寺」境内から
22番「平等寺」境内から

 

携行食

 

 私の携行食はピーナッツです。これは欠かせません。そして,今回のへんろでかつやくしたのは,飴です。黄金糖のようなシンプルな,甘いだけの飴がいちばん,へたに味が付いているのは良くありません。やわらかいのはダメです。キャラメルを買いましたが,一つ二つ食べただけで,残りは処分してしまいました。

 ピーナッツは歩きながらでも,札所のベンチに座ってでも,いつでも食べられます。少しずつ食べられます。塩気もあり,短時間でエネルギーになるような気もします。以前,チョコレートもカロリー補給にはいいだろうと持ってきましたが,夏場は溶けてしまうので良くありません。

 カロリーメイトはどうかと思うのですが,味がどうも好きになれません。14番「常楽寺」の前で,車の人からお接待してもらいましたが,ずうっと持ち運んだだけでした。

平等寺で 夕焼け うろこ雲
平等寺で 夕焼け うろこ雲

 

明日も晴れ

 

 翌日の朝食用にパンを買いに外に出たら,空と雲がとてもきれいでした。黒く影になっているのは22番「平等寺」のあたりです。

 宿(山茶花)のおかみさんに

「明日朝早くでます。おにぎりこさえていただけますか」

 とお願いしました。

「今の時期,ちょっと恐いから,申し訳ないけど」

 と断られました。食中毒の心配はこういう職種では神経質になって当然です。(「さかもと」や「鱗楼」では気軽に作ってくれました)

 というわけで近くの食料品店を教えてもらい,買いに出かけたのです。

 きれいな夕焼け空でした。お遍路にきたのが一週間前,それから一滴も雨が降っていません。どうやら明日も晴れるようです。