7月24日(金)71番〜78番 善通寺・丸亀を通って坂出市へ。


スピード落とせ


 今,歩いていることを実感する,それがわたしのへんろです。ほかごとを考えないではないけれども,それらことごとくは子葉であり末節です。

 観光は要らない,先へ歩いているときにだけ充実を感じる,それがへんろです。

 などと考えていたら,「スピード落とせ」の看板が目に入ってきました。

 もちろんそれはクルマ用の看板でしたが,自分の思考の流れにあまりにもピッタリだったので思わずにんまりしてしまいました。

 歩くことに集中できるのが心地よいのです。


足湯


 足湯はここ数年のちょっとしたブームでしょうか。バイクツーリングで道の駅に立ち寄ると、足湯を設置しているところが多くなってきました。

 だいたいどこも無料開放しています。ちょくちょく利用しています。

 こんなところにもありました。71番「弥谷寺」参道入口です。でも,これはどう見ても“温かく”なさそうです。足湯と書いてありましたが,足水?でしょうか。


なら,だいじょうぶですね


 弥谷寺境内で地元の女性に声をかけられました。

「全部歩いてるんですか?」

「区切りで歩いていますから,今回は伊予三島からなんですよ」

「なら,だいじょうぶですね」

「???」

 どうして「大丈夫」なのかいまいちよく分かりませんでした。



どこから来たの


 もう一人,同じ場所で新聞配達のおじさんにも声をかけられました。 

「どこから来たの?」

「愛知県です」

「・・・,そう,遠いね」

 返事にやや間がありました。「どこから」という問いはふたつあります。「今日はどこから歩いてるの」という問いと「出身地はどこ」という問いです。

 わたしは後の意味で撮りましたが,ひょっとしたら前の意味だったかもしれません。


 弥谷寺ではお気に入りの写真がふたつ撮れました。540段の階段を上がったところにある本堂からの眺めは雲に浮かぶ山々の遠景がきれいでした。また,竹林に差し込む朝日もいい写真になりました。

 ただ,草がかぶった草むらや竹林はマムシを警戒しながら歩きました。雨続きのあとだけにマムシも元気なんじゃないかと想像しました。竹藪も先週の台風でしょう,ずいぶん荒れていました。


いろんな人が道を教えてくれます


 ちょっときょろきょろしているだけで親切な人が現れます。

「甲山寺なら,あそこを右に曲がってまっすぐ,あの山の麓ですよ」

  そのときは道をさがしていたわけではありませんでした。ちょっとした寄り道をと思っただけだったのです。

 わざわざ車をとめて教えてもらいました。せっかく教えてもらったのだからその道を行かなければまずいし,寄り道の方にも行ってみたいし、・・・しばらくそのばにたったままクルマが遠く去るのをやり過ごしました。

 

善通寺門前で

 

 うしろから来たタクシーが横に止まり,運転手さんが声をかけてきました。

「ずっと歩いてるの? すごいね,わたしも一度はと思ってるんですよ」

 そのあとの問いが,???でした。

「どこまで来た?」

「・・・・・・」

 わたしも運転手さんもいま善通寺の門前にいます。一瞬で運転手さんも自分の質問のおかしさが分かったようで

「あっ,善通寺か」

 と,即座に返してくれました。そして,「気をつけてな」との声を残して走り去っていきました。

 歩き遍路をしたいという運転手さんの思いは伝わりました。

 

お接待もいろいろ

 

 73番「出釈迦寺」では納経所で200円いただきました。「これで冷たい飲み物でも」という心です。境内でも若いおかみさんから飲み物をいただきました。 

 76番「金倉寺」に向かう田んぼ道では, 自転車に乗った女性から冷たいお茶をいただきました。











 77番「道隆寺」手前では,民家からいきなり声がかかりました。


「おへんろさん,ちょっと待って」

 大きな声でした。 

 年配の男性が走ってきて,手作りのお地蔵様を渡してくれました。

 息子さんが創ったものだそうです。 小さなかわいらしいお地蔵様でした。ありがたくいただきました。

  道隆寺では,手水舎の横にウォータークーラーがありました。

 これもお接待です。しかも,真夏の歩きへんろにとっては,何よりもありがたいお接待です。

「好きなだけ汲んでってください」

 そうおっしゃっていただきました。


 お接待もさまざまです。 


少しの風でいい

 

 炎天下の道端,日陰で腰をおろして休憩します。

 ふっとやわらかい風が吹いてきます。

 その風の涼しいこと,本当に生き返ります。

 そんなときは普段あまり食べないあんパンやクリームパンもたいへんおいしく感じます。


コンビニ

 

 ただ猛暑の時期は体が熱くなってしまい,体をまるごと冷やさないと体力が回復しないことがあります。そんなときは冷房の効いているコンビニ店内は最高の“避暑地”です。

 コンビニは都会の木陰です。


  さらにありがたかったのは,椅子スペースがあるコンビニです。コンビニの経営戦略もあると思いますが,席が設けてあるコンビニが増えたような気がします。

 今回のへんろでは何回かお世話になりました。アイスで体を冷やしたり,弁当を食べたりしました(もちろん持ち込みでなくちゃんと購入しました)。 


 持参しているへんろ地図にもコンビニが載っています。そのコンビニマークを頼りに歩きました。


納経所のかわいく,美しい女性


 今回のへんろでは納経所の女性が美しいのが印象的でした。男性へんろにとっては何よりのごちそうです。

  三角寺,椿堂,善通寺,・・・。

 そして78番「郷照寺」の女性も前のお寺に劣らず美しい女性でした。

 ただ,ここがちょっと感じがよくなかったのは,下の方10cmぐらいしか開いてないガラス窓です。

 駅で切符を買うようなシチュエーションで納経帳のやりとりをしました。何かを警戒しているような形になってしまい,あまりいい感じはしませんでした。

 お寺なんだから,そして訪れるのはお参りに来る人なんだから,もっとオープンな窓口であってほしいと思いました。


みんな親切


 いかにもへんろ候の格好をしているわたしがちょっとキョロキョロしていると,よく声をかけてくれます。

「右だよ,右。次の札所まではね,・・・」

 わたしとしては,右なのかまっすぐなのかが分かればいいわけです。ところが,地元のおじさんおばさんはその先も懇切ていねいに教えてくれます。

「そしたらね,川があるから川を渡って左ね,300mぐらい行くと病院があるのね。それを右に見ながら道なりにカーブしてるから,・・・・・・」

 ずっとずっと先まで続きます。とても頭に入りません。どこまで続くんだろうと最後まで聞きます。

「ありがとうございます,よく分かりました」と言って別れるときには,「右だったよな」という最初のポイントを復唱することで精一杯になっています。

 

坂出市商店街


 アーケードにおおわれた商店街は坂出市のメインストリートのようでした。

 何かの祭りかバザールの飾り付けもありました。

 しかし,商店街そのものは全く活気がありませんでした。午後の五時ちょっと前でしたが,シャッターを下ろしている商店がたくさんありました。