スタートで失敗

　一年ぶりに降り立った伊予三島駅，昨年は伊予西条駅からここまで最終日に歩きました。最後だからと予定より遠くまで歩きました。足指の付け根のところに大きな水ぶくれができてしまい，そのあと１週間ほどたいへん苦労したことを思い出します。

　今回はスタートいちばんで失敗をしました。自宅から名鉄前後駅まで送ってもらったのですが，いざ改札へと向かったときに，金剛杖を持っていないのに気がつきました。一番大切な「お大師様」をおいてきてしまったのです。

　大失敗でした。すぐ届けてもらって事なきを得たのですが，新幹線の時間に間に合わなかったらと気が気ではありませんでした。

　岡山駅は相変わらずでした。ホームが入り組んでいる上に頭上に看板がいっぱいあります。案内も度を過ぎると人を迷わせてしまいます。もうちょっと間引きをしてほしいと思います。

　「特急しおかぜはここでいいですか。」女性の乗務員がいたので聞いてみました。ほかにも制服の女性がいました。最近はいろんな職場に女性が進出していますね。

げんこつおにぎり，ピーナッツ，まんじゅう

　コンビニでげんこつおにぎりとピーナッツ，まんじゅうを買いました。おにぎりとまんじゅうは三角寺で食べました。ピーナッツは緊急用の携行食です。携行食としてはピーナッツが最適だと思います。

　「もしもし」突然，同僚のＳ氏から携帯に電話，電話の向こうのＩ氏，Ａ嬢とも話ができ，とても元気が出ました。

「山の上のお寺でおにぎりを食べています。」元気な声をＳ氏に届けることができました。

三角寺は山の上

　三角寺からの長い下り道，ところどころ海に向かって絶景が展望されました。まだからだが慣れていないせいでしょうか，だらだらの下る山道は長く感じられました。５㎞ぐらい歩いたのかな，と思ったときにはまだ４㎞に届いていませんでした。

お接待所で冷たい麦茶

　天候は曇り，九州の西を北上している台風の影響が少しばかりあるようです。しだいに雲が厚くなり，今にも降りそうな雰囲気になってきました。

　常福寺（椿堂）の手前にお接待所がありました。机もいすもあり，「冷蔵庫の中に飲み物があります」とたいへんうれしいお接待でした。麦茶をたっぷり３倍も飲んでいると，突然激しい雨が降ってきました。ちょうど休憩所での降雨，ラッキーと言えばラッキーでした。

雨合羽

　持ち物で最後の最後まで迷ったのが雨合羽です。今までの４回のへんろでつかったのが２回，真夏の雨ならぬれてもむしろ気持ちがいいものです。１グラムでも軽い荷物にということになると，極力減らした方がいい。「でも，･･････」と毎回吹っ切れないで持ってきてしまっています。「へんろの荷物は煩悩の大きさと言います」と２回目のへんろで出会ったお遍路さんに教えてもらいました。

　今回は久しぶりに雨合羽が役立った，ということにしたいと思います。といっても，持っていたからあえてつかったと言えばそうでもあります。

椿堂から境目峠

　椿堂に着いたら雨はもうやんでしまいました。

　椿堂は番外のお寺です。小さいけれどもこざっぱりとしたきれいなお寺でした。

「歩きへんろの方には納経料をお接待することにしています」と，優しい言葉をかけていただきました。

　椿堂から境目峠に向かいます。遍路道を通って境目峠を越えるか，国道のトンネルを通るかの２つのルートを選択します。わたしは後者を選びました。

　民宿岡田で夕食のときにいっしょになった女性お遍路さんは峠を越えてきました。

「峠には県境の道標がありましたよ」

　ちょっと悔しい思いをしました。愛媛県と徳島県の県境です。

民宿岡田

　わたしの県境はトンネルの真ん中でした。道標はありませんでしたので，出口の徳島県三好市の案内板で確認です。三好市は以前の池田町です。阿波の金太郎，やまびこ打線の池田高校，といえばわたしぐらいの年代の野球少年なら誰でも知っているでしょう。

　「民宿岡田」は実にへんろ宿らしい宿で，たいへんいい一泊をさせていただきました。

「雨は大丈夫でしたか。クツは？　新聞紙入れておきましょうか？　あ，バギーなら大丈夫ですね。」わたしのクツはへんろ専用靴です。少々の雨なら何の問題もありません。

　と女将さんはおっしゃっていたのですが，翌朝わたしのクツにはちゃんと活性炭が入っていました。

　ここで今回歩き遍路の人と始めて出会いました。若い女性の一人歩きです。埼玉から飛行機で3日前に四国に入ったそうです。

「飛行機往復とホテル1泊月で26000円というプランがありますよ。ただ，それだと日にちを選べません。今回わたしはそれではありませんが，飛行機で来ました。晴れた日に来たかったからです。」

　わたしが名古屋から新幹線と特急で片道13000円余かかっています。往復にしたら26000円，ホテル代まるまる安い。しかも東京からです。飛行機はすごく安いんですね。航空業界も生き残りにたいへんだ，と見るべきでしょうか。