8月9日(金) 四万十川を越えて,土佐清水市へ

四万十大橋
四万十大橋

朝ご飯はコンビニで

 

 朝早く出立します。この日は5時でした。国道沿いのコンビニに行って食糧を調達します。おにぎり,あんパン,ピーナッツを買いました。あんパンには今回はたいへんお世話になりました。以前はパンよりはおにぎりのほうがよかったのですが,なぜか今年はおにぎりをおいしく食べられませんでした。どうしてでしょうか,いまでもよくわかりません。そのかわり,あんパンやクリームパンを好んで食べました。

 

地元のおじさん

 

 散歩のおじさんに声をかけられました。

「どこからきたの? お国は?」

「愛知県です」

 愛知県と答えるか名古屋と答えるか一瞬悩みます。実際は「豊明市」というマイナーな出身地なのでそのまま答えても理解されません。隣接の「名古屋」と言えば,「ああ,そうですか」となります。それでは厳密に言うとウソをつくことになるので若干の後ろめたさがあります。それで「愛知県」にしようか,と迷いが生じます。

「昨日はどこでお泊まり? 」

「日の出さんです」

「ああ,あそこはホエールウォッチングの人たちがよく泊まってますよ」

 そうなんだ,このあたりはホエールウォッチングなんだ。

 

四万十大橋

 

 四万十大橋にいたる手前の田舎の県道で前回へんろの記憶が蘇ってきました。

 6年前のことです。暑さで立ち寄った自販機,日陰があり,その中にベンチもありました。命をつなぐ水と,冷たい水を買って休憩しました。元気を取り戻して再出発して200mほどあるいたとき,金剛杖をもってないことに気がつきました。

 そのときの落胆を思い出しました。200mといえども戻ることは大きな桎梏です。その自販機,そのベンチがそのままありました。6年経ってみれば,懐かしい思い出です。

真念庵ふもとの水車
真念庵ふもとの水車

新伊豆田トンネル

 

 四万十川を越えて国道321号線に入ります。少しずつ少しずつ上って,峠を越えます。昔は山頂まで歩いたのでしょうが,今はトンネルがあります。新伊豆田トンネル,1,620mの長いトンネル,30分近くかかりました。ずいぶん歩いたなあ,と思って振り返ると,先の出口よりうんと近くに入口があってびっくりします。歩くスピードを否応なく実感する瞬間です。

 トンネルの中央で四万十市から土佐清水市に入りました。

 

ドライブイン水車

 

 食べたかったわけではありません。体を冷やすために入りました。空気も道路もどんどん熱くなります。そして,風が弱くなり,日陰がなくなっていきます。普通の暑さなら,涼しい木陰に入って涼風を感じて幸せを味わうことができます。ところがこの猛暑,そういうわけにはいかず,体がどんどんヒートアップしてしまいました。こうなったら文明の力を借りるしかありません。

 ざるそば600円,冷たい水といっしょにゆっくり味わって食べました。

「冷たい水,いっぱい持って生きます?」

 おかみさんのありがたい言葉,ペットボトル2本にいっぱい詰めてもらいました。

 

民宿久百々
民宿久百々

午後2時に民宿久百々に

 

 とにかくこの猛暑,午前中にできるだけたくさん歩かなければなりません。今日はドライブイン水車に着いたのが11時,5時から歩き始めて約22km歩きました。民宿まで残りは8km強,たいしたことはありません。

 

スイカのお接待
スイカのお接待

 でも,それは距離が短いという帳面上のことでしかありません。昼すぎてからは暑さと疲れが一気に襲ってきます。10kmでもいっぱいいっぱいです。

 結局民宿に着いたのが2時,さすがにこれはちょっと早すぎました。

 おかみさんがさっそく出してくれたのが,でっかいスイカ,おいしさもとびっきりのでっかさでした。

ぜんぶ選択
ぜんぶ選択

ぜんぶ洗濯

 

 着ていたものをぜんぶ洗濯機に放り込んで洗濯をしました。

 パンツ一丁に宿の浴衣を羽織っています。衣類はここに掛かっているものだけで本当は十分です。はいているパンツも,浴衣があればすっぽんぽんでもかまいません。

 往復の電車内容でポロシャツを一枚持ってきました。歩いている間は使わないのでずっと背負って運んでいます。新幹線の中でも白衣を着て乗れば,ポロシャツも必要ありません。

 はじめて遍路に出たときに,「背負っている荷物はその人の煩悩です」と教えてもらいました。捨てられそうで捨てられないのが煩悩(持ち物)です。

 

菅直人元総理大臣
菅直人元総理大臣

額縁の中の菅直人元首相

 

 菅元首相は真面目にひとりで回っているそうです。

「ご自分で電話を掛けてこられましたよ」

 宿の女将さんはそう言いました。隣の女性は,たまたまいっしょになった一人歩きの女性だそうです。

 奥さんのように寄り添っています。