4月27日(土)ウィングヒルズ・九頭竜ダム

 岐阜県に入ったあたりから雲行きが怪しくなりました。東海北陸自動車道,郡上八幡ICを過ぎたらポツリポツリと雨が,ぎふ大和PAでの休憩は雨宿りになってしまいました。何とここはトイレ以外に何もなし,売店はおろか休憩室すらありません。 
 雨は次第に本降りになってきます。風も強く吹き,気温もぐんぐん下がってるようで寒さがじわじわと押しよせてきます。ベンチも屋根のないところしかありません。建物(トイレ)を風よけに立っているしかありませんでした。 
「せめて屋根のあるところのベンチをつくってほしいよね」 
 一緒に行った長女にそう訴えましたが,もちろん何ともなりません。天気予報は大ハズレでした。私たちのあとで雨宿りに来たスーパーツーリングのお兄さんも 
「天気予報は全天晴れマークでしたよね。ひるがの高原では雪が舞ったらしいですよ」 
 本当かどうか分かりませんが,駐車場警備の人に聞いたと言っていました。結局この「ぎふ大和PA」で小一時間ほど雨宿りを強いられました。 

「とりあえず白鳥ICまで行って,ここまで行こう」 
 道の駅「白鳥ふれあいパーク」まで行き,計画を練り直すことにしました。今日の目的地は「ウィングヒルズ白鳥」でした。 
 ところがもう大丈夫だと思っても山間部の天気はあてになりません。トンネルをひとつ抜けたらまたもや雨,道の駅までは強引に突っ走りましたが,結構雨に打たれてしまいました。しかも道の駅での休憩中も降ったりあがったりでスッキリしません。 
「どうしようか」 
「どうしよう」 
 ウィングヒルズまで上るかどうか二人で迷いました。こういうときは迷うだけで根拠になることは何もありません。上るにしろ止めるにしろ根拠のない決断しかないのですが,凡夫の弱さです,迷いに迷いました。 
「とりあえず郡上八幡まで戻ろうか」 
 そう言ったとき,娘の顔が微妙にくもりました。 
「よし,行こう。計画どおり,山の上は降ってるかもしれないよ」 
 もちろん娘は反対しませんでした。 

 行ってよかった。 

 少しだけ降られましたが,急勾配のワインディングを上るのは爽快でした。路面が濡れていたので倒すときは気をつかいましたが,右へ左へ倒しながら上っていくのはバイクツーリングの醍醐味です。しかも,ウィングヒルズには「満天の湯」というもう一つの快適空間がありました。 

 ウィングヒルズ白鳥の「満天の湯」で温かい天然温泉につかり,寒さで凍えたからだが生き返りました。入泉料800円,この時のわたしにはその倍でも高くないと思えたほどでした。 
 下山は県道をさらに先に進み,福井県川に下りました。この下山県道127号線,なかなかのトリッキー県道でした。川沿いに国道158号線まで下ります。一車線の左は川,右は山という狭い県道です。狭いだけでなく路面は荒れていて,頻繁に落石があります。左に流れる川ははるか何十mの絶壁の下にあります。 
 そして何より恐怖だったのは,道の左端にガードレールがないことです。道幅とバイクの大きさを考えれば落ちることはないという理屈は頭では理解できます。しかし気持ちはしばしば理屈には支配されません。 
「ガードレールがない,怖いよね」 
 道端にバイクを止め娘に同意を求めました。右にカーブするとき,川に吸い込まれそうな気分になります。 

 県道から国道158号線に出て,九頭竜ダムに行きました。九頭竜湖にはサクラが咲いていました。わたしの住んでいる濃尾平野では4月上旬の風景でした。日本中ではまだまだサクラがあちこちで咲いているんですね,あらためてそんなことを思いました。 
 国道158号線から白鳥で国道156号線に入り岐阜・名古屋方面に下りました。東海北陸自動車道を使わずにあえて一般国道を使ったのはこの時ならではの理由があったからです。 

 九頭竜湖で止まったときに走行距離が66601kmになっていました。あと65kmでそろいぶみです。高速道路上では緊急停止ができないので,白鳥から国道156号線を岐阜方面に下ることにしました。そろいぶみのメーターで止まりたかったのです。 
 66666kmになったのは国道156号線,道の駅「みなみ」の少し南,須原トンネルでした。ボルドールくんけなげにずいぶん走ってくれました。次は7万kmを目ざします.