宿坊,安楽寺
大きなお寺,きれいな宿坊でした。しかも,風呂は温泉でした。
ただ,浴衣が部屋にないので,フロントに訪ねると
「有料で,250円いただいています」
浴衣を有料にするところは最近になって増えたのでしょうか。前回までは一度も経験がありません。それとも,宿坊では当たり前なのでしょうか。9日に泊まった立江寺でもそうでした。
夕食の前には勤行があるのですが,今回は盆前でご住職が忙しく,お寺の説明ツアーだけになりました。
何百人もの団体さんが泊まることがあるそうですが,今回は私を入れて4人の宿泊でした。一人は素泊まりで,食事は3人でした。神奈川から来た大学生と青森から来た女性です。
「朝食は4人からできます」と電話でいわれていたとおり,結局3人でしたので朝食はありませんでした。朝食の分として,パンとジュースをいただきました。
2日目の失敗
<その1>
朝起きて気がつきました。
「洗濯物を取り忘れた」
洗濯物は洗濯機のドラムの中壁にきれいに張り付いていました。もちろん乾燥していません。乾燥機に入れれば,と思いましたが,間が悪いことにコインがひとつもありません。昨日の納経の時に小銭600円(2冊分)を「ちょうどあった」と出したことを思い出しました。
朝の6時です。お寺の人は誰もいません。両替ができません。いっしょに泊まった一人とすれ違いましたが,いきなりお金を無心するほど親しくなってはいません。
「ミストクーラーになって,ちょうどいいや」
そのまま来て歩くことにしました。もちろんやせ我慢です。
<その2>
タオルを2枚,どこかにおいてきてしまいました。もちろん,この失敗のダメージはほとんどありません。
もっとも大きなダメージはその次にやってきました。
大失敗
<その3>
8番「熊谷寺」で納経帳に書いてもらうのを忘れて,9番まで来てしまいました。気がついたのは,9番「地蔵寺」で般若心経を唱えているとき,
「・・・是大神呪是大明呪・・・?・・・是無上呪・・・??・・・是無等々呪・・・???」
般若心経は止まってしまいました。
納経所に荷物を預かってもらい,往復することにしまいした。
今来た道を帰るのは何ともやるせないものです。3人のお友達男性おへんろさんに出会いました。すこぶる軽装で楽しそうに歩いてきました。私の心中と合わせ鏡のようです。
ロバのパン屋さんと出会いました。のんびりのんびり車が進んでいきます。私の気持ちは反対,焦りがどんどん増してきました。
自転車のお大師様
道を間違えていました。今来た道を戻るのだから間違えることはない,と思い地図を持ってきませんでした。いったん違う道にはいると前後左右全く分からなくなります。もちろん遍路の案内札はありません。逆打ちの難しさを味わったように思いました。
困ったことになった,とますます焦りが募ります。と,そこへ自転車に乗った若者が,
「8番なら,その坂道を下ったすぐそこですよ」
お大師様はやっぱり困ったときに来てくれます。
お接待所
冷たいお茶と飴をいただきました。お茶をいっぱいいただいてしまいました。後の人のことを考える余裕がそのときの私にはありませんでした。8番と9番の予定外の往復が思った以上にひびいていたのでしょうか。
後から来たおへんろさん,ごめんなさい。
氷砂糖といえばいいのでしたか,昔懐かしい飴を口にほおばって再出発しました。冷たいもの,甘いものが一等おいしい,おへんろさんに来るといつも思います。
団体おへんろさんといっしょに
10番「切幡寺」は,着いてからが長い。だいたいお寺にはそういうところが多い。地図の上では平地になっているが,お寺だけ小山の上にあるので,急な坂道,階段を上らなければなりません。切幡寺もそういうお寺でした。
333段の階段に,女坂33段,男坂42段の階段を上ります。もちろんその前に急な坂道をクリヤしてからです。次の日に焼山寺の山道で出会った人が,藤井寺から焼山寺を往復して,これから切幡寺まで行くと言っていたのが実にあり得ないことのように思えます。
とにかく,お寺というものはつくづく坂や階段が好きなところなんだなあと思います。
切幡寺では,安楽寺でいっしょに泊まった,神奈川の大学生と青森の女性に出会いました。また,その後何度かいっしょになる,東京から来た男性ともすれ違いました。出会いというものはなかなか妙なものです。
団体おへんろさんが,じょうずにお勤めしていました。いっしょに読経の練習をさせてもらいました。
大荷物のおへんろさん
1番で見かけたおへんろさんです。大きな荷物を背負って,休み休み歩いていました。蚊取り線香もぶら下げています。マットを括り付けているので「野宿」をする人だと思いました。
「今日は鴨島の善根宿に泊まります。昨日は安楽寺の山門の上に泊めてもらいました」
吉野川を渡る分かれ道で,
「ぼくはこっちへいきます」
彼は川島橋の方へ行きました。私は前回,川島橋を渡ったので,今回は阿波中央大橋を渡ることにしていました。距離的には同じぐらいだと思います。
「じゃ,気をつけて」
この大荷物のおへんろさんとはこの後会うことがありませんでした。今は,どのあたりを歩いているんでしょうか。
阿波中央大橋に「昭和28年」という建造年が刻印してありました。私より年上なんだ・・・,ちょっとした驚きでした。
ヤンキー風の高校生
ヤンキー風ではあるけれどヤンキーとは限りません。コンビニで買ったあずきバーとパンを食べていると,
「回ってるんですか?88カ所ってやつですか?」
といきなり聞いてきました。
「ずっと歩くんですか。夜も歩くんですか?」
「夜は歩かないよ」
「止まらないんですか。どれぐらい歩くんですか?」
地元の高校生だと思うのですが,四国の人でもおへんろの実際を知っているのは少ないのかもしれない,と感じました。
「ぼくには,そっこう,ムリ」
そういって二人,自転車に乗って去っていきました。
青森さんと世田谷さん
藤井寺の手前で青森さんと出会いました。安楽寺でいっしょになった女性です。
「途中で車に乗せてもらっちゃいました」
藤井寺では,世田谷さんと出会いました。この人は十楽寺で出会った人です。神戸に実家があるので,そこからバスで来たと,言っていました。
「吉野さんですか? 今日予約してある・・・」
という声が聞こえてきました。
「私も吉野です。いっしょに行きましょう」
旅館吉野では,青森さん,世田谷さん,神奈川の大学生ともうひとり大学生がいっしょでした。