早朝,きれいな写真が撮れました
4時30分に宿を出ました。でたときはまだ真っ暗でしたが,歩くにしたがって光が差してきました。
自販機捜しで大あわて
讃岐相生駅を越えるといよいよ大坂峠です。ここまで4km,1時間でした。ペットボトルの水がほとんどなくなったので補給しなければなりません。駅には自販機はあるだろうとそれまでの自販機はパスしました。
国道を左折すると駅が見えました。その駅舎を見てビックリ,あまりの小ささに自販機の存在が裏切られそうな予感がしました。
行ってみてガックリ,そしてパニック! この先およそ4時間の山道をボトルの底に残ったほんのわずかな水で耐え忍ばなければなりません。それとも,1時間近くかけて引田駅に戻った方がいいのか。思考はめまぐるしく回転しました。回転したけれど,名案も出ず決断もできません。
当てもなく振り返ってみると,何とそこに自販機が見えました。さっき左折した角,建物のブラインドになっていて自販機があったのに気づきませんでした。「地獄に仏」「大海の木片」とはこんな土岐の気持ちをいうのでしょうか。
ペットボトルの水を2本ゲットしました。
県境に騙された
大坂峠をのぼっていくと「県境まで○km」という案内表示があります。○の数字は2→1.5→1 というふうに当然減っていきます。減っていくのがきついのぼりを歩くときの励みになるのはいうまでもありません。
「県境まであとちょっと」「県境までいったらあとは下りだ。楽になる」そういう思いでのぼっていました。峠が県境であると自然に思い込んでいたからです。
ところが県境を越えても延々とのぼりが続きます。結局県境から800mものぼったところに峠がありました。平地ならさほどの距離ではありませんが,峠道では30分近くかかる登山になります。
「こののぼり,どこまで続くんだ。いい加減にしてくれ,県境に騙された」
憤慨しながらやっと峠に着きました。県境は分かりやすく峠にしてもらいたいものです。あるいは案内を県境ではなく,「峠まで○km」としてもらってもいいから登山者の期待を打ち砕くことの無いようにしてもらいたいものです。
未舗装の長い山道
クルマも人もまったく通りませんでした。靜かで,木陰もたくさんあって涼しいので歩きやすい道です。いきなり音を立てる鳥にビックリするぐらいで安心して歩けます。
イノシシ注意の看板はありました。が,そんな雰囲気は感じません。ましてやクマの心配は皆無でしょう。ただ,今回唯一心配しているのが焼山寺へんろ道です。けっこう山深く入るので,クマ対策でお鈴を霊山寺で買うことにしました。
炎天下の卯辰越
県道41号線に入るとアスファルトの炎天下,木陰はありません。そして,菅笠もありません。壊れた菅笠は翼温泉で処分してもらうように頼みました。直射日光を直接頭で受けて「卯辰越」という峠を越えました。ここが大坂峠に勝るとも劣らない。カーブを曲がると現れる次ののぼり道,それが次々と繰り返されます。ここでも「こののぼり,いつ終わるんだ」という気持ちになります。
それにしても菅笠のありがたさが身にしみました。
霊山寺で買い物
菅笠 3,000円
歩きへんろ地図 2,500円
お鈴 1,500円
お守り 4,000円
お守りを売っていたおばちゃんと楽しい会話をしました。
「こっちが健康安全で,こっちが開運除厄。見た目,同じだけどどう違うの?」
「中身が違うの!」
「なか,見ていいの?」
「だめよ。御利益なくなっちゃう」
「お姉さん,見たことあるの?」
「わたしも,ないよ」
だれもわからない,信じるしかない,そういうものなんでしょう。
菅笠のありがたさ
1番から2番までは30分足らずの短い距離ですが,アスファルトの炎天下で菅笠があることのありがたさを味わいながら歩きました。
ただ,2番で見たら同じ大きさの菅笠を2,500円で売っていました。
???
何かと控えめな感じがする2番「極楽寺」は,わたしは好きですが今まであまり縁がありません。
一度ここの宿坊に止まってみたいと思っていますが,今回もパスすることになってしまいました。
すごい荷物のお遍路さん
3番「金泉寺」で見かけました。大きな荷物を背負っているだけでなく,前にも首から提げているし,手でももっています。お参りをする姿を見ましたが,わたしと違って長い時間かけてお経をあげていました。
このときは言葉を交わすチャンスがありませんでした。寺院関係の人で厳しい修行をしているんだろうなと想像し,近づきがたいものを感じました。
このあと本日の宿でいっしょになり,たっぷり話をすることができました。
島根からはじめて遍路に来た女性でした。医学療法士をしていたそうです。
愛染院のお接待
愛染院のなかに入るとお茶が用意されていました。縁側に腰をおろして休憩しました。以前通ったときは中に入らなかったのでこんなお接待があるのを知りませんでした。わざわざ中に入らないで通過してしまう人は結構いるんじゃないかと思います。
紙コップがたくさんおいてありましたが,使用済みのコップは1つもありません。今日のお接待,わたしが初めて受けたようです。午後2時でした。
4番「大日寺」手前のへんろ道
このへんろ道がどうしても思い出せませ
ん。案内の立て看に誘導されて入った道です。一所懸命に記憶をたどってみました。愛染院のところのへんろ道の記憶は鮮やかですが,この道は一片すら蘇ってきません。以前2回は車道をそのまままっすぐいったに違いありません。
新しく整備された遍路道なんでしょうか。「歩きへんろ地図」には載っていません。ショートカットになるわけではありませんが,日陰になることと雰囲気がいいことでおすすめの道です。苦になるアップダウンはありません。
4番「大日寺」5番「地蔵寺」を打って「おんやど森本屋」へ
「民宿森本屋」というのが今の正式名称で地図にもそう出ています。「おんやど森本屋」は昔ながらの名称で看板はそう掲げられていました。「八十窪」のおかみさんの話「おんやどと出ている家に米一合を渡すと泊めてくれるんよ」が思い出されます。
この宿では先ほどの島根の女性といっしょになりました。いろんな準備をして全部持ってきたら大荷物になってしまったようです。奥之院も全部回るつもりだと言っていました。だからあまり先に進めません。今日明日と連泊してこのあたりの寺を全部回るようです。
スペインから来た母と娘
自転車で回っているそうです。娘さんは長岡大学に留学してマスターコースを卒業,お母さんはドクターというなかなか優秀な2人です。お母さんはほとんどスペイン語しかできません。娘さんは英語と片言の日本語が話せます。わたしと島根の女性と娘さんで片言の日本語と片言の英語で話しました。でも,いちばん通じたのは身ぶり・手振り?
「う〜,日本語で何というか,分からない。クゥップゥ〜,クゥップゥ〜」
そう言って,両手をばたばたさせます。
「ふくろう? ふくろうのことかなあ」とわたしが言ったあと,島根の女性がスマホで調べてくれました。
「ふくろうだ。当たってましたよ」
でも娘さん,片言とはいえ日本語がなかなか上手でした。ただ,代名詞の使い方がよく分かってません。目の前にいるお母さんのことをわたしたちに説明するのに「あなた」と言います。
「わたしはエネルギーの勉強している。あなたはドクター」
「そういうときは,『あなた』じゃなくて,『この人』とか『お母さん』と言ったほうがいい」
島根の女性がそんな風に教えていました。