朝5時出立
自販機の前で1回目の休憩。薬指の傷からはまだ出血がある。だんだん少なくはなってきているがなかなか止まらない。右手を上げて歩かなければならない(つまり,手が振れない)のがつらい。足のまめも痛かったので,水抜きをした。まめの水抜きがちゃっちゃっとできるようになったのが,何となくうれしい。
種間寺でT君と会った。昨日はここで野宿したらしい。
ゴム草履の若者
道ばたにいたおじさんに道を尋ねた。
「あの山の中腹に見えるのが,清滝さんだよ。」はっきり見えた。今まででいちばんわかりやすい道案内だった。
清滝寺も山の上。ここも無理をしないでくるま道を登った。指の痛みはほとんどなくなったが,ちょっとでも何かにぶつけると,息ができないぐらい痛い。通夜堂がきれいだった。これなら私にも泊まれるかもしれない。
下山するとき,ゴム草履のへんろさんを見かけた。このときはまさかこれで歩いているとは思わなかったが,この後青龍寺の手前ですれ違った。つまり,私より遙かに速いスピードで歩いているんだ,ゴム草履で。足を見ると,足の裏が真っ赤だった。
ああいうんでも歩けるんだ。確かに昔の人はわらじで歩いたわけだし,丈夫な靴でしか歩けない私たち現代人は,それだけ足の裏が弱いのかもしれない。異常なのは我々の方か?
スナック喫茶
高知は喫茶店が少ない。これも不景気,地方切り捨ての政策のせいか?(自衛隊OBのNさんの受け売り)喫茶店なんてゆとりのある人が利用するもの。やっぱり愛知は景気がいいのかもしれない。
スナック喫茶で日替わり定食を食べた。ぶっきらぼうで口の悪い(私に対してではなく,常連さんにだが)お兄ちゃんが少し気になった。ここも”喫茶”が主ではなく,”スナック”が主なんだろう。
塚地峠
へんろ道入り口の四阿で休んでいたら,
「歩いているの?僕も若い頃2つか3つ回ったけれど,何日かかるの?山,越えるの?」とおじさんが声をかけてきた。実は山を越えようか(へんろ道),トンネルにしようか(国道)迷っていた。そのタイミングで「山,越えるの?」と聞かれ,「越えない」とは言えなくなってしまった。
「登ります。」当然のような顔をして答えた。
峠まで700mがきつかった。下山ルートに清水がわき出ていた。おいしかった。
がんばってくださぁい!
「がんばってくださぁい。」後ろから声がした。はじめは自分に対してだとは思わなかった。「がんばってくださぁい。」もう一度声がした。振り返ると自転車に乗った小学生の女の子がにっこり笑って手を振っていた。あっという間に通り過ぎた。こんな小さな子が。すごくうれしかった。
「ありがとう。」大きな声で気持ちを返した。
みんなたくましい。
海岸沿いの道を歩く。ミミズが無数に死んでいる。そういえば去年もそんな風景に接したような気がする。何で?これが普通?自然の摂理か。
青龍寺でT君に出会った。
「今日は夜,歩けるところまで歩いてみようと思っています。」すごいな。台風が近づいていて,今夜は荒れるかもしれない。こんな時でも……,本当にたくましい。
「なかなかいい雰囲気の階段がありますよ。」本当にあった。雰囲気は確かにいい。しかし,足の痛い私にとっては,なくてもいいものでもある。
寺を出るときにA君にひさしぶりに会った。
「なかなかすてきな階段があるよ。」今度は私が教えてあげた。
「そうですか。今日は野宿です。」A君も若いし,たくましい。
観光ホテル
三陽荘は観光ホテルだった。大浴場,オートロック,部屋風呂,貴重品庫,滅菌コップ,バスタオル,ジュータンの廊下等々。民宿でなく,観光旅館。民宿+2000円はやむを得ないか。ぜいたくだけれど,たまにはいいことにしよう。
ただ,缶発泡酒250円の自販機が廊下にあったのはありがたかった。2本も飲んでしまった。