8月10日(金) 28番「大日寺」〜30番「善楽寺」

和顔施

 

 すれ違ったときに挨拶をします。そのタイミングがなかなか難しい。

「おはようございます」

 すれ違う直前で言うと,相手はちょっとびっくりしてそのまま通りすぎてしまいます。びっくりしたときにすれ違ってしまうので,相手の反応が分かりません。数m手前で発生し,お辞儀をするのがベストタイミングでしょうか。あまり遠すぎても声が届きません。

 いろいろな反応が返ってきます。むっとして無視をする人もいます。おへんろなどは基本的にはお邪魔虫ですからそれはそれで文句があるわけではありません。愛想がいいのは商売をしている人,そう感じましたがそれは偏見でしょうか。

 

6年前に転落した用水路

 

 下を見ずにコンクリート部分をまっすぐ進んでいったら突然世界がひっくり返りました。その用水路が6年前のそのままにありました。

 すぐ後ろを歩いていたおへんろさんふたりに助けていただきました。カメラが壊れました。怪我もしました。一番ひどかったのは右手からの出血です。包帯を巻き止血しましたが,ほぼ一日中少しずつ出血していました。

 助けてくれたふたりのおへんろさんには感謝しても仕切れません。あのときふたりがいなかったら,と思うとやっぱり何らかの”縁”を感じてしまいます。

二期作

 

 田植えが終わったあとの田圃です。遠く奥のほうにあるのは稲刈り前の田圃でから,おそらく手前の田圃も稲刈りあとに田植えをした田圃だと思われます。すなわち,二期作。子どものころ社会科で習ったことはありますが,実際に見たのは初めてでした。

 

 農作業をしていたおじさんが,

「この先400mぐらいで,休憩小屋があるよ」

 そう教えてくれました。先のことを教えてもらうのは何よりも有難いことです。ちょっと先に立派な遍路小屋があるのに,窮屈な日陰で休んだことが今まで何回もありました。

 人生と同じく,先のことはほんのちょっとの先でも分かりません。

 

国分寺はだいたい平地にある

 

 今日は28番,29番,30番と三つの札所を打ちます。昨日は札所が一つもありませんでした。札所がないとただ歩くだけになってしまいます。

 札所に来て,札所の杜で休んで,お勤めをして,納経をして,・・・,そういった安らぎがないと心にゆとりが生まれません。

 

 国分寺は,阿波,土佐,伊予,讃岐のそれぞれの国にひとつずつあります。

「国分寺って,みな平地にある」

 そんなことに気がつきました。奈良時代,それぞれの国の中心地,つまりいちばん便利なところに建設されたからでしょうか。

 それにしても,札所でゆっくりできるということは幸せです。

蒲原局の女性局員

 

 郵便局で軍資金をおろします。田舎や山に入る遍路の場合たよりになる金融機関はダントツで郵便局です。どんな過疎地にもあります。

「かとりって,おいしいって評判ですよ」

 思わぬ話題で気が合いました。「かとり」はこの地域では料理がおいしいという評判が高いようです。やっぱり昨日の宿は二重丸です。

 終わりがけにこう励まされました。

「楽しんでいってください」

 その通りです。どんなことも楽しまなければいい結果を生むことはありません。高すぎる目標を掲げ,しかめっ面でがんばるのは多くのことを犠牲にすることでもあるかもしれません。お釈迦様も「苦行は私の道ではない」と言われました。

 速く歩くことばかりに気を遣い,無理をしてきました。無理をすると必ず後にツケがきます。

 楽しんで歩くこと,そして,いろいろなものを見,聞き,感じることを大切にしなければなりません。局員さんの言うとおりです。

 

へんろ小屋

 

 このあたりはきれいで整ったへんろ小屋がたくさんありました。野宿をする人たちはこういう所をたよりにしています。このへんろ小屋にはビニール袋に小分けした米がおいてありました。鍋・釜を持って歩いている人にはうれしいお接待でしょう。

 野宿で回っているおへんろさんに会うと決まって

「野宿はいいよ。あなたも野宿しなさいよ」

 と言われます。でも,その覚悟にはなかなか至りません。

高知駅まで歩く

 

 九州から来ている通し遍路の人と話すことができました。へんろ小屋や通夜堂に泊まりながら回っているそうです。今日は久しぶりにビジネスホテルを高知駅前にとったそうです。

「たまには洗濯もしたいしね」

 私も高知駅前にビジネスホテルをとりました。よさこい祭りの影響で何軒か断られた後,やっととれた宿です。

「高知駅まではそんなにありません。歩けますよ」

 地理感の乏しい私はどうしようか迷っていました。

「明日の31番も,高知駅からなら簡単に行けると思います」

 

 ここでこの人に出会わなかったら,違う展開になっていたはずです。今日この時間にここにいなかったらもちろん出会えません。そうすると,昨日の宿が違っていたら,昨日42km歩いていなかったら,昨日3時に浜吉屋に着いていなかったら,・・・・・・,と,すべてが繋がってきます。

 これが"縁"というものでしょうか。

頭が痛い

 

 30番「常楽寺」から高知駅前に歩いたのが午後2時から3時になる時間帯でした。今日の総歩行距離は26km程度になる予定なので,前3日間に比べてゆっくり歩けました。

 しかし,2時過ぎの太陽のがんばりは違いました。風がなく日陰もありません。顔と頭が暑さにすっぽり包まれてしまったようです。頭がもわっとし,じんじんしびれるような痛みも加わります。さらに,アスファルトの照り返しが下からも襲ってきます。

 距離は6km程度,1時間半で着く道のりでしたが,途中でレストランJOYFULLにドボンしました。

 抹茶アイスと冷房処置が強力な助っ人になったことは言うまでもありません。

 

高知駅前のよさこい祭り

 

 本祭は明日の11日だそうですが,今日も何か所の会場で「よさこい」チームが踊っていました。

 夕食を食べに高知駅前に出たついでに少し見学しました。老若男女,雑多な年齢性別の人たちが気持ちも振りも上手にあわせて踊っていました。赤やら黄色やら,ユニフォームもきれいです。はじめて生で見ました。

 この後中華料理店で夕食をとって,外に出たら激しい雷雨になっていました。走ってホテルに戻って事なきを得たのですが,よさこいチームたちは雷雨,豪雨の中でも練習通り踊り続けたようです。