8月14日(月)

住吉荘 香南市野須町
住吉荘 香南市野須町

インドメタシン 

 住吉荘を出てまもなく,三たびSさんと出会う。 宿がうまく取れなくて,ツインで27,000円のリゾートホテルにA君といっしょに泊まったらしい。高い! 
 湿布薬の話をしてくれた。 
「インドメタシン,あれはよく効くよ。今もアキレス腱のところに張っているんだけれど,痛みがピタッと治まる。」 インドメタシンという言葉は知っていたが,何物かよくわからない。 一度使ってみようかと思った。ただ,痛みの出方は人それぞれのようである。 私はどちらかというと,足の裏のまめ。筋肉痛はさほどひどくならない。 意外にトクホンチールが効いているのかもしれない。 

毎日,毎日,太平洋 香南市ふきん
毎日,毎日,太平洋 香南市ふきん

 

用水路に落下した。 

 突然からだが宙に舞った。とんでもないことが起きた,と一瞬で理解した。 しかし,何が起きたのかは少しずつしかわからなかった。痛みと痺れが全身を走る。 血がベトリと手につく。服は泥まみれになった。 
 さっと助けに来てくれたのが,ハットをかぶった若者T君。 裂傷を負ったところを手際よく消毒してくれ,絆創膏を貼ってくれた。 
「大丈夫ですよ,目の上の傷は。小さい。ボクサーの傷より小さいですよ。 汗でうまく貼れないけれど,貼っておきますよ。」 
「ほかは,痛いところはないですか?ここも貼っておきましょう。 右手以外は?大丈夫ですか?」 
「よかった。よかったですよ。あそこから落ちて,この傷ですめば不幸中の幸いですよ。」 
「ゆっくりあがってください。ゆっくり,あわてないで。」 
 どこをどう怪我しているか,自分でもよくわからない。 見えないし,パニックにもなっていた。そういうときに適切に世話をしてくれたT君のおかげで,心を落ち着かせることができた。 何よりも「だいじょうぶ。傷は浅い。」といってくれた言葉がわたしの助けになった。 
 そうこうしていると,ちょっと遅れて28番を出たSさんも来て二人で面倒を見てくれた。 近くにT君とSさんがいてくれていたのは,全く偶然である。 T君とは直前の28番で親しくなったばかり。Sさんが近くにいてくれたの幸いだった。 それも偶然である。思ったより軽傷ですみ,へんろを続けることができたのも偶然である。 すべてが偶然。それをお大師様のお導き,というのかもしれない。 
 ちょっと前を歩いていたへんろのおじさんが「どうした,大丈夫か。」と言ったきり,さっさと行ってしまったのも,偶然である。 
 それにしても,T君の細かい配慮には感心した。 用水路から荷物を拾い上げたあと,見落としがないかきちんと周りを見てくれた。 なんでもないようだが,こういうことが自然にできるかそうでないかは大きな違いのような気がする。 
「ちょっとでも変なところがあったら,医者に行ってくださいよ。」 と言い残してT君もSさんも先に行った。私はしばらく座って体を休めながら,二人に本当に感謝した。

へんろ道
へんろ道

 

血が止まらない。 

 足は何ともないようだったので,しばらくは快調に歩いた。 (手はじんじんと痛みがひどかった。)しかし,右手薬指からの出血がちっとも止まっていないことに気がついた。 バンドエイドの通気口から血が吹き出ている。 
 田んぼの木陰に座って休みながら,出血部位を粘着包帯でぐるぐる巻きにした。 (この使用法が間違いであることに,包帯を取るときに気がつき,後悔した。) 
 何とか止まってくれ,と念じながら歩いたけれど,包帯から血がにじんでくる。 だんだん血のにじみが広がってくる。心臓より下げないように歩いたが,出血はいっこうに止まらなかった。 歩くことによって心拍数を高めているのでなかなか止まらないのかもしれない。 
 
弁当ランチ
 

 軽食と思って注文したんだが,すごい盛りつけだった。ちょっとした”お子様ランチ”ののり。おかずがいっぱいの女子高校生のお弁当といったらいいかもしれない。ミスオーダー,だったね。 
 でも,マスターは親切だった。30番までの道のりを丁寧にを教えてくれた。 
 
元気でよかった。
 

 30番に入ってすぐ,T君,Sさん,Nさんに会った。 
「よかった,元気でそう。」 
「歩けるんですね,よかった。」 
「この時期,化膿しやすいから,しっかり消毒しないとまずいですよ。」このときこう忠告してくれたNさんとは次の日「関の家」で同宿になった。 
 そして,30番を出てすぐ, 
「駅はこっちでいいですか?」と,道を尋ねたら,親切に教えてくれた上に,200円を接待してもらった。100円玉を出して, 
「1枚じゃ足りないか。もう1枚。これでジュースでも買って。」 
 
若い女の子
 

 土佐一宮駅のホームのベンチに座っていた女の子。きれいだけれど,ちょっと堅く難しい顔をしていた。でも, 
「ごめん駅はこっちの方ですか?」と尋ねたら,にこっと満面に笑みを浮かべ, 
「そちらです。」と優しく教えてくれた。それだけだれど,なんかすごく心が和んだ。 
 電車の中では女子高校生の集団といっしょになった。中でもいちばん左の女の子が,目が大きく,ふっくらとした顔立ちでとてもかわいかった。私の好みである。その隣の女の子は,なんかひどく難しい顔をして,にらんでいるような目つきをしていた。笑顔でさえいれば,たいていの若い女の子はかわいいのに……,もったいない。 
 
足のメンテナンス
 

 ごめん駅前のスーパーで,夕食とガーゼを買った。このガーゼはこの後大活躍をした。指の血止めはもちろん,まめの治療の時にも何度も役だった。 
 右手薬指の出血が止まらないし,痛い。しかも右手がうまく使えないといういらいらも募る。それやこれやでひどく疲れてしまい,足のメンテナンスを満足にせず寝てしまった。翌日,珍しく足の筋肉痛に悩まされたが,メンテ不足のせいだろうか。