8月13日(火) ひたすら国道56号線,宇和島市へ

国道56号線 右は山,左は海
国道56号線 右は山,左は海

 

梅干し2個

 

 昨夜は7時過ぎに早々と電気を消して寝ました。いや,寝たふりをしました。おかみさんが隣でずっとテレビを見て,”いっしょ”し,いつまでも一人にしてもらえなかったからです。

「明日は4時出発にするので,早く寝ます」

 そう言って一人にしてもらいました。

 

 4時。出発の時間,おかみさんはちゃんと起きてくれて,凍らせたペットボトル2本と梅干し2個をお接待してくれました。そして,玄関に出て,いつまでもいつまでもわたしを見送ってくれました。4時だから真っ暗です。でも,曲がり角で見えなくなるまで玄関に立って送ってくれました。

 思い込みの強い人でしたが,いい人であることは間違いありません。

 そして,この梅干し2個が,このあとのへんろにたいへん力になりました。歩き疲れて,暑さに負けそうになったときに,囓った一片の梅干しがどんなに力を与えてくれたか,目から鱗が落ちる思いでした。

トンネルが二つ
トンネルが二つ

 

宇和島まで行けます。

 

 磯屋のおかみさんは迷うことなく断言しました。宇和島までは40km近くあります。ちょっと長すぎるので,はじめは途中の津島で宿をとっていました。そこまでは25kmていど,こちらは逆に短すぎますが,やむを得ないと思っていました。

 でも,おかみさんは断言します。リージェントホテルがいい,とホテルまで推薦してくれました。その勢いを借りて,昨夜リージェントにも予約を入れました。この時点からダブルブッキングです。

歩行者用のトンネル
歩行者用のトンネル

 

迷い

 

 津島で止めるか宇和島まで行くか,朝の時点でふたつのホテルが予約してありました。この時点でもダブルブッキングが続きます。早く決断してどちらかをキャンセルしないと迷惑をかけてしまいます。

 もうひとつ迷うことがありました。ルートがふたつあります。峠越えのやや短いコースと海岸沿いを行く国道ルートです。峠はアップダウンがあるので体力的にきついけれど涼しい日陰があります。国道はなだらかですが距離が長く,何より日差しに晒されるというのが一般的です。いままでもこの種の選択を迫られて迷ったケースが何回かありました。

 

 決断は歩き出して2時間後,柏の旭屋前でしました。国道をこのまま歩いて宇和島まで行こう,距離と暑さは覚悟しました。そして,津島のホテルアイリンにはキャンセルの連絡をしました。

 

行ってみないとわからない。

 

 ところが何と,国道はずっと日陰でした。いい方向に予想が裏切られ,少なくとも午前中は気持ちよく歩くことができました。一般的に国道は強い日差しとの闘いが待っていますが,今回はそれがありませんでした。なぜか。

 その秘密は山と国道と海の方向にありました。

 宇和海にそって走る国道56号線は南から北に向かっています。したがって海が西側,東が山という方向関係になります。すると,右側に聳え立つ山に東から昇る太陽の日差しが遮られることになるのです。ほぼ午前中いっぱい,その山陰に入って涼しい道を歩くことができました。

 室戸に向かったときはちょうど東西が逆向きで,朝の7時ごろから容赦のない日差しに晒され続けました。そのときとは大違いです。

 行ってみないと分からないものです。

昨夜同宿したバイクへんろさんたち
昨夜同宿したバイクへんろさんたち

 

バイクへんろの4人組

 

 鳥越トンネルの手前のコンビニに泊まっているバイクを見つけました。白装束を来たライダーが4人,遠目に見えたとき,磯屋に泊まった人たちだと直観しました。そばまで行ってわたしから声をかけました。

「昨日,磯屋さんに泊まっていませんでしたか」

 びっくりしたようで声が出ませんでしたが,わたしも泊まっていましたと言うと合点がいったようです。

「お遍路さんがひとりいると,おかみさんが言ってた,あの・・・」

 わたしもバイクに乗るんですよ,と声をかけると,

「なに,乗ってるんですか?」

「CBです」

 と答えると,オーッという驚嘆の声があがりました。いったいどういう意味だったんでしょう。

松尾トンネル ちっちゃい日陰
松尾トンネル ちっちゃい日陰

正午には日陰はこんだけ

 

 松尾トンネルをでて,ちっちゃな日陰で休憩,こんだけの日陰をやっとのことで探し当てました。こんなささやかな日陰でも,座って靴を脱いで,靴下脱いで水を飲めば,もうほとんど天国です。最近では珍しい公衆電話もありました。

 ただ,やっぱり行ってみないとわからないものです。このあとわずか50m下ったところには立派なレストランがあり,屋根の付いた大きな日陰がありました。本の先ですら未来のことは分からない,つくづくと実感させられます。

 クルマだったら行き過ぎても気軽に戻ってこられますが,歩きはそういうわけにはいきません。すべてが行き当たりばったりです。

宇和島城
宇和島城

ホテルor民宿

 

 リージェントホテルは宇和島城のすぐ近くにありました。8階建て?の立派なホテルでした。ホテルは割高だという印象がつきまといますが,さまざまなサービスもあって一概に割高だとは言い切れません。

 このホテルはお遍路さん優遇の200円朝食券が付いて5,500円でした。安いとは言えませんが,割高でもありません。ホテルの長所は何と行っても風呂が自由に使えるというところです。何回も入れますし,朝風呂につかることもできます。ここでは,風呂に入ったついでに洗濯もしてしまいました。