8月12日(金)

7番「十楽寺」阿波市
7番「十楽寺」阿波市

初めてのお接待 

 5番札所「地蔵寺」から6番札所「安楽寺」までは,へんろ道を通らず県道を歩いた。 公衆電話を見つけるためである。携帯電話が普及した現在,公衆電話がどんどん減少している。 今日泊まる宿に連絡をとろうとするのに,携帯を持たない私には大きな苦労が降りかかってくる。 携帯電話はもう必須アイテムなのかなぁ(私以外の家族はみんな持っている)。 
 役場前の公衆電話を見つけ,本日の宿“ふじや総本家”を予約して,外で一服した。 そうしたら,自転車に乗ったおばさんが寄ってきて, 「ご苦労様です。これで冷たいものでも買って飲んでください。南無遍照金剛,南無遍照金剛。」 
 私は初めて接待を受けた。合掌されて,どうしていいかわからなかった。でも,これが“縁”というものなのかもしれない。もし私がこの公衆電話を利用しなかったら,この女性から施しを受けることはなかった。 

吉野川 
吉野川 

 

一期一会 

 

 彼女と最初に会ったのは,4番札所「大日寺」であった。 参拝を終え5番に向かうところで菅笠・金剛杖の若い女性とすれちがった。 「大日寺はこっちですか?」 その後11番まで抜きつ抜かれつで歩いた(競争しているわけではないが)。 

 

 10番「切幡寺」では,私が断然早く,333もある階段を下りるときにすれ違った。 「まだ、だいぶあるよ。」と,声をかけたが,もっと優しい物言いのほうがよかったかな,とちょっと考えてしまった。 しかし,“ふじや総本家”では,彼女はとっくに着いていて,くつろいでいた(タバコを吸っていたな)。 12番札所も参拝済みであったようだ。 

 

吉野川堤防「へんろ小屋」
吉野川堤防「へんろ小屋」

 彼女とはその後何回か会った。13日朝の11番札所,12番に向かうへんろ転がしの山道,12番札所。 そして,12番からはいっしょにへんろ道を下山した。 翌々日の宿,“みょうざい旅館”でも一緒になった。 

 みょうざい旅館で会ったときに“おっ”と言った彼女の言葉は印象的だった。 今思えば彼女との邂逅はこれが最後だった。かわいい子だったよ。 すべて,一期一会である。