8月12日(日) 35番「清滝寺」〜36番「青龍寺」

 

清滝寺のイヌとネコ

 納経所の棚にネコが座っていました。毛並みがきれいで,おとなしそうなネコでした。頭を撫でてやってもなすがまま,じっとしています。すると,いきなり足下に大きなイヌがやってきました。こちらも,体は大きいけれど,人なつっこいイヌでした。

 イヌは,棚の上のネコを見つけると,盛んにアプローチします。どうやらいっしょに遊びたいようです。

「イヌの方はフレンドリーなんですけれどね。ネコは怖いようですよ」

 ネコは前足を出して,追っ払おうとしていました。友達にはなれないようです。

 

 

すてきな通夜堂

 清滝寺の通夜堂はたいへん立派です。畳敷きの部屋が2部屋,それぞれが6畳ほどもあったかと思います。広い土間があり,ベンチや机が置いてあります。洗面所もあります。こんなすてきな部屋があるなら,通夜堂に泊まってもいいかなと思いますが,清滝寺は例外です。

 昨日会ったふたりのおへんろさんが泊まっていました。

 

すき家で牛丼

 

 朝5時に宿を出発して少し歩いたら,ローソンと,その向かいにすき家がありました。朝食はコンビニでパンを買って,といういつものパターンではなく,今日はすき家を選択しました。

 牛丼の並が280円,味噌汁と冷や奴をつけて+100円,合計380円で温かいご飯が食べられます。どうしてこんなに安くできるのでしょうか。品質を落としているのか,無理な競争をしているのか,この安さは適正価格だとは思えません。牛丼チェーンの生き残り競争もなかなかたいへんなようです。

 

浦ノ内湾のフェリー

 

 塚地峠に上るへんろ道の入り口にへんろ小屋がありました。ここでまた,清滝寺の通夜堂に泊まっていたふたりのおへんろさんに会いました。

 この先,県道を行ってトンネルを抜けるか,山道で峠を越えるかの選択があります。遍路マークの矢印は峠を指していました。楽なのは高低差がほとんどないので,トンネルを抜ける方,距離もほとんど変わりません。

「大学生の若者,峠道を行ったよ。若いから元気だわ」

 と,福岡から来たおじさん。

「どっちに行きます? 私も峠道の方に行こうかと」

 今日は長い距離を歩く予定ではないので,峠道をゆっくり行こうと思っていました。ふたりのおへんろさんは須崎のへんろ小屋まで行きたいと話し合っていました。

「ここからでもまだ25km以上ありますよね」

「須崎の街までだったら30kmちかい」

 そこへ,無精ひげを生やしたおへんろさんが来て,話に加わりました。

「フェリーがあるそうですよ。それに乗れば須崎まで行けますよ」

 浦ノ内湾を運航している,主に学校へ行く子どもたちが利用しているフェリーがあるようです。ただ,今は夏休み中なので運休という心配もあるとのこと。 

 

塚地峠

 

 峠までの道は石畳や階段でよく整備されていました。「峠まで○○m」という案内板も100mごとに設置してあり,安心して上れました。でも疲れました。体力は必要です。

 峠には何もありません。

眺望もあまりよくありません。少し下ったところで宇佐の町並みが少しだけ見えました。

 

湧き水

 

 半分ほど下ったところに湧き水が出ていました。たいへんおいしく飲めました。自動販売機の水や茶も冷たくておいしいのですが,冷たすぎます。湧き水は「ちょうどよい冷たさ」で体にすっとなじんでいくようでした。

 冷房の室内が寒すぎるのに比べて,木陰の涼しさが心地よいのと同じような感覚です。

 

 

福岡から来た修験道のおじさん

 

 鍋・釜を持って自炊をし,どこでも野宿をするので荷物は10km近くになるそうです。福岡の家を出て,徳山まで歩いたとも言っていました。

 2日ぐらい野宿して,旅館に泊まるぐらいのペースがいい,選択もしたいし,風呂にも入りたいからね,などと野宿生活の話をいろいろしてくれました。

 修験道のお坊さんだそうです。山ごもりや断食の修行もあり,断食は3日,7日,21日などいろいろな段階があるそうです。自転車でも車でも回ったことがあり,車の場合はすべて車中泊だったと言っていました。

 寝ることと食べることが自由になれば,遍路は最強かもしれません。おじさんは70歳,すこぶる元気なおへんろさんでした。

 ちなみにこのおじさんは,初日に海部の遊遊NASAで言葉を交わしたおじさんでした。そのことは後で写真を見て分かりました。

 

もうひとり,九州から来たおへんろさん

 

 このおへんろさんは,30番「善楽寺」で高知駅前までの道を教えてくれたおへんろさんです。

 年齢は定かではありませんが,40歳前後だと思われます。喫茶店で食事をして荷物を預かってもらっているということで,このときは持っていませんが,普通は彼も大きな荷物を背負っています。

 野宿をする人はどうしても荷物が大きくなります。宿を取る心配はしなくてもいいから気楽だと言われますが,常時大きな荷物を持って歩かなければなりません。

 すれ違いざま彼は,

「今日は日曜日だから,フェリーは休みかもしれません」

 そう言って須崎のへんろ小屋に向かっていきました。この後もう会えませんでしたので,どうなったのかは分かりません。

 

奥の院

 

 納経所の人に道を尋ねました。

「スカイラインへ行くのは,この道,奥の院への道を行けばいいんですか?」

「そうですよ。この横の道,奥の院の手前にスカイラインがありますから,奥の院へは横切っていくことになります」

「ありがとうございます」

 私の目的はスカイラインでしたが,奥の院へ行こうとしているように間違われたようです。

 以前読んだ本に,本当の遍路は奥の院へ行くことだと書かれていました。そのことをふと思い出しましたが,私にはまだ奥の院参りをする体力,気力,覚悟はありません。

 

横浪スカイライン

 

 36番「青龍寺」から須崎へ行くのに2つのルートがあります。前回は打戻ルートでしたので,今回は違う選択をし,スカイラインを歩きました。愛知県で言うと,本宮山スカイラインや茶臼山高原道路を歩く感じです。

 ぶっ飛ばして走るライダーやドライバーが奇異な視線をあびせて走り去って行きます。私もボルドール(バイク)で走りたくなりました。

 

 

民宿「旭旅館」

 

 スカイラインからつづら折りの道を延々と下りきった先にありました。

地図ではほんの先に見えましたが,1km以上は歩いたと思います。周りを高い山腹に囲まれた陸の孤島のようなところに湾内の家並みがありました。スカイラインが遙か頭上高くに見えました。

 

 

 

 

 

「あした朝早く出たいので,朝食はなしに・・・」

 旅館のお姉さんにいつものパターンを申し出ました。が,朝食は早くてもできるということを言っていただきました。

「じゃ,5時に朝食で5時半に出発ということにしましょうか。おへんろさんで,朝早くから歩きたいという人は多いですよ」

 5時に朝食なんて初めてです。たいへん親切な旅館でした。

「よかったら上まで車で送りますよ」

 そう言っていただき,それもお接待だと思って気持ちよく受けることにしました。

 洗濯も接待していただきました。干すのは自分で部屋の中に干しました。ハンガーや洗濯ばさみがたくさん用意してあったのも気が利いた心遣いでした。そうしたちょっとしたものが足りなくて困ったことが何回かあります。

 別室で夕食を食べた後,部屋に戻ってみると,ズボンを干した位置が変わっていました。これも親切なお接待ですが,ちょっとびっくりしました。

 テレビが天井近くに設置してありました。寝っ転がってみなさいということです。これも心遣いといえば心遣い・・・・・・。