アンパンマン列車
作者のやなせたかしさんが高知県の出身ということから,四国の各線ではアンパンマン車両が走っています。わたしが指定された座席は,アンパンマンワールドのまっただ中でした。
4輌編成の特急宇和海は,外装こそ全車両アンパンマンにデコられていますが,内部がこんなふうになっているのはここだけ,1輌の半分20席程度です。希望したわけではありませんが,見事当たってしまいました。わたしの乗った車両は,「ドキンちゃん号」でした。アンパンマン列車にもいろいろあるようです。
「いちばん早く内子駅までつくキップをください」そういって,名古屋の某駅で乗車券特急券を買いました。
5:47 名鉄前後駅発
6:35 名古屋駅発 新幹線ひかり491号
8:24 岡山駅発 特急しおかぜ3号
11:15 松山駅発 特急宇和海11号(アンパンマン列車)
11:51 内子駅着
内子駅に下りたときは雨が降っていました。いきなりレインポンチョ仕様でスタートです。
降ったり止んだり
レインポンチョをかぶって歩き始めたらまもなく雨が小降りになってきて,薄日が差してきてしまいました。こういうのがいちばんいけません。湿気を保ったまま気温が上がるので,ポンチョの中が蒸し風呂状態になってきてしまいます。歩かなければなりませんから体温が上がり,汗もどんどん出てきます。
雨には濡れないけれど,汗でぐっしょり,何だかへんてこな状態になってしまいます。しかもたいへん気持ちが悪い。
そうかといってポンチョを脱ぐとまた雨が降ってきます。いちいちリュックを下ろして出し入れするのもたいへん難儀です。
「降るならしっかり降ってくれ」
レインポンチョ撤収
結局ポンチョはコンビニで食糧を調達するときに撤収しました。宿に電話をして聞いたら,
「近くには買い物するところはありません」
内子駅の近くで夕食と明日の朝の分を買うことにしました。弁当やパンなど,歩くときは少しでも軽い方がいいのですが,しかたがありません。この後15㎞を食糧といっしょに移動することになりました。
大瀬の七夕かざり
ポンチョは,10㎞ほど歩いた大瀬で再び着ることになってしまいました。本当に「降ったり止んだり」は面倒です。
内子町大瀬は作家の大江健三郎の故郷です。生家があるようですが,よく分かりませんでした。案内が出ていないのはどうしてなんでしょうか。
町のメインロードは七夕かざりで賑わっていました。旧暦では7月11日になるようですが,ここではどの期間で七夕を祝うのでしょうか。
さかえや旅館
国道380号線と379号線が分岐するところに「さかえや旅館」はあります。昔は交通の要所で文字どおり栄えた旅館だったのだろうと思います。が,すっかりさびれた旅館でした。
ご主人とその奥さんでしょうか,玄関を入ったら二人がいました。二人の関係は未だに分かりません。異様だったのは,奥さん(わたしが勝手に判断した女性)が一方的にまくしたてていたことです。ご主人(と思われる男性)が席を外してわたしに話しているときも,誰もいない空間に向かってしゃべり続けていました。
「こんにちは,お世話になります」
そう声をかけても,反応せずに誰もいない壁にしゃべっていました。それでも,ふとしたきっかけでわたしを認知したようで,わたしに向かって,
「外で写真を撮りましたか? この家を撮らなかったでしょうね」
いきなりそんなことを言われました。
そんなふうに言われると,撮りましたとはいえません。実際は撮ったのですが,
「撮ってません」
嘘をついてしまいました。
猫の臭い
部屋に通されてからも落ち着きませんでした。なぜかというと,不快な臭いが漂ってくるからです。強烈ではありませんが,いやな臭いです。初めはなんの臭いか分かりませんでした。が,それは猫の臭いでした。性格に言えば,猫の小水の臭いです。嫌なものは目を瞑ればいいのですが,臭いは何ともなりません。
トイレに入ったら,トイレットペーパーがありません。はながみが置いてありました。もちろんボットン便所です。
「風呂は薪で沸かしているんです。沸くまでちょっと待ってください」
薪が燃料というのにびっくりしました。もちろんシャワーはありませんでした。
部屋にはエアコンがありませんでした。幸い雨模様の涼しい夜でしたからぐっすり眠れましたが,洗濯物がまったく乾きませんでした。隣に川が流れていることもあるのかもしれませんが,湿気が半端ではなく,ズボンも下着も,白装束も,朝にはしっかり湿気っていました。
本日の歩行距離 15.0km