8月6日(月) 海部駅から出発

海部駅へ

 

 名古屋駅から新幹線で岡山駅,マリンライナーで高松駅,うづしお7号で徳島駅,ワンマンカーで海部駅と乗り継いでスタート地点までやってきました。海部駅に到着したのが13時40分でした。

 名古屋駅で新幹線を待っているときは昨夜からの雨の名残をしっかりとどめ,空は一面厚い雲に覆われていました。その雲は鈴鹿山脈を越えたあたりから徐々に少なくなり,岡山駅で下車したときには予報通りの青空がひろがりつつありました。

 マリンライナーの指定席は2階建て車両の下でした。座ると目線にプラットホームがあります。新鮮な気分でしたが景色はあまりよろしくありません。美しい瀬戸内海も鉄橋の防護柵の背景になってしまいました。

 途中で車掌さんが検察にきました。

「ご面倒ですが,乗車券特急券を拝見します」

 たしかにウェストポーチの奥に入っているのはめんどうです。もちろん車掌さんの仕事ですから異議申し立てはありません。しかし,隣で眠っていた人がそのまま検察をパスしてしまったのは少し違和感を感じました。眠っているのを起こして不快な思いをさせてはいけないという配慮だったと思います。あれは,車掌さんの配慮だったのか,鉄道会社のマニュアルだったのか,どっちなんでしょう。

 

 

先頭車両の緊張


 マリンライナーでもうずしお7号でも指定された席は1号車(先頭車両)でした。徳島から海部に向かうワンマンカーは当然"1号車"です。

 1991年5月の信楽高原鉄道の事故以来,私は鉄道車両に乗るときは3両目以降ときめていました。1輌め大破,2輌めは折れ曲がり,3両目は見た目無傷という現場写真を見て,そのあまりの違いに愕然としたからです。

 ワンマンカーは1車両しかありません。単線をかなりのスピードで走っていきます。この調子で走っているところにいきなり踏切を越えてダンプが現れたら大事故は避けようがありません。

 そんなことを考えていると緊張が緊張を呼んでしまいます。でも,考えてみたら運転手さんは常に一番前で命をかけています。たいへんな仕事なんだなあ,と改めて思いました。

「危険ですので運転手に話しかけないでください」

 ときどきこのアナウンスが流れます。危険なのは運転手だけではありません。

 

 

「海部バス停」から再スタート 13時50分でした。 

 海部駅から歩き出してすぐ,遊遊NASAという公園の休憩所で大きな荷物を持ってお遍路さんに出会いました。

「今日は穴喰あたりまでですか?」

 と声をかけられました。

「生見まで行きます」

「えっ(絶句),生見,まで」

 思いがけず驚かれてしまいました。

 とたんに,生見までは無茶なんだろうか,不安がむくむくと沸いてきます。「12キロ,3時間,問題なし」地図を見て確認します。基本的に自分は心配性で小心者なんだと,遍路に出てからも何度も確認させられてきています。

 

 

雨が降ってきた

 

 青空も見えるし日差しもありますが,ところどころに厚い雲も見えます。風が吹いているので体感的な暑さはさほどありませんでした。日陰があって,風が吹いていて,これがベストコンディションと調子よく歩いていたら,ポツリポツリと雨が落ちてきました。

 雨は小雨なら厭うべきものではありません。真夏の遍路は日差しを浴びるより,小雨を浴びた方が何倍か楽に歩けます。菅笠が顔のまわりを守ってくれますし,少ししめった白衣は風を受けて,より涼しさを感じることができます。しかも,白衣はすぐに乾きます。

 注意しなければならないのは足下,靴の中です。靴の中がぬれてしまうと気持ち悪いだけでなく,マメを作る原因にもなってしまいます。ゴアテックス製の靴は多少の雨ならはじき返してくれますが,ズボンを伝って流れ込むような土砂降りになると防ぎようがありません。

 幸いこの日の雨は小一時間ほどであがりました。

 

 

高知県に突入

 

 トンネルを抜けると東洋町,徳島県からお別れ,いよいよ高知県突入です。

 真新しい避難施設がありました。東日本大震災の後建設したものと思われます。津波に対する警戒情報はこの後あちこちでめにしました。「海抜○m」「避難指定地区」「津波避難所」・・・などなど。

 甲浦で見かけた避難施設,家並みの中心にありました。いざ津波,というときに駆け上って避難する所でしょう。

 真新しい施設とは逆に,古い石碑もたくさん見ました。何年も前から,何回も津波に襲われているんだという事実がそこに残っていました。

 

 

海水浴場は少ない?

 甲浦の海岸に遊びに来ている人たちがいました。海水浴だと思いますが,人出は少なくて閑散としていました。昨日まで天気が悪かったからでしょうか。

 思えば,高知の海岸ではあまり海水浴場をめにしなかったような気がします。室戸岬まで延々と続く海岸,また,室戸岬から高知に向かって伸びるきれいな海岸,そんなに長い海岸線があるのに「意外に海水浴場が少ない」と感じました。

 岩場はもちろん海水浴はできませんが,砂浜であっても遠浅ではないのかもしれません。

 

 

民宿谷口の自転車

 民宿「谷口」の自転車を借りてパンを買いに行きました。翌日の朝食用です。朝早く出立するために宿の食事は食べません。1・2時間程度歩いた後日陰で食べられるように用意しておきます。

 いろいろ迷いましたが,あんパンとチョコレートパンを買いました。娘はこしあんの方が好きと言いますが,私は粒あんが好きです。チョコレートパンには「製造元:名古屋市東区・・・」とあったので,思わず手に取ってしまいました。敷島パンでした。

 

 翌日の出立は4時と決めました。