朝,気持ちよく晴れました。
日光川の向こうに,御嶽山がきれいに見えました。
23号線で桑名へ行き,木曽川の堤防道路をさかのぼりました。
木曽三川公園から東海大橋を越えたあたりまで一気に北上,空気が澄んでいて遠くまでよく見渡せました。左手方面に伊吹山,前方方面に御嶽山,雪をかぶった姿がきれいです。
馬飼大橋を少し越えたところで写真を撮っていたら,乗用車が隣に止まりました。中から年配の女性が降りてきて,
「山がきれいですね」
と声をかけてくれました。このあと三重県の方に峠を越えて阿下喜の温泉に行くそうです。県道25号線の峠途中,濃尾平野が見渡せる展望広場があると教えてくれました。今日は予定になかったので行きませんが,いつかは行ってみたいと思います。
「あれは伊吹山でしょう。で,あっちの山は何ですか?」
その女性がわたしに聞いてきました。進行方向正面を指しています。
「あれは,たぶん御嶽山だと思います」
いざ聞かれると自信がなくなってしまいます。実は左手の雪山が伊吹山だとは知りませんでした。
女性と別れてからそのまま堤防道路を北上しました。木曽川を左手に見ながら(つまり愛知県川の堤防道路)走ります。するとまもなく小さな小屋が見えてきました。これが「愛知県営西中野渡船場」という渡し舟専用の小屋で,今日の目的地はここです。ここから小舟で対岸の羽島市へ行くことができます。
西中野渡船場からの渡船は県道の一部で,運賃は無料です。ただし人しか乗ることはできません。少し待っていたら,係のおじさんが車でやってきました。
「ふね,のれますか?」
「ああ,いいよ。12時半からだから,もうちょっと待ってて」
時刻表はありません。何時から何時までと決められていて,小屋に行って「渡りたい」と言えば船を出してくれます。
12時半きっかりにまた小屋に行くと,係のおじさんがひとり増えて2人になっていました。どうやら船頭さんは2人のようです。乗船客は私ひとり,ほかには誰もいません。わたしだって必要に迫られて渡船するわけではありません。たまたま雑誌の紹介で目にしたから,話の種に渡ってみようと思っただけです。
「向こうへ行って,また,戻ってきたいんですけど,いいですか?」
「いいよ。戻ってきてあげるよ」
後からきたおじさんが運転席(といっても席はありません,立席です)に着き,わたしともうひとりのおじさんが乗船して出発です。空は雲ひとつ無い青空,風はほとんど無風で,川面は空の青を写しとって深みを増しています。
上流方面に目をやると,新幹線の鉄橋が川を横切り,ときどき白い車体が走って行きます。そして,その上に乗っかるように雪山が遠望できます。
「あれは,御嶽山ですよね」
先ほど河岸で年配の女性に答えた答えを確かめるように聞いてみました。
「ああ,そうだよ」運転してない方のおじさんが答えてくれました。「左,奥に小さく見えるのは,乗鞍だよ」
「あ,そうなんだ,乗鞍岳ですか」
「乗鞍の方が,小さく見えるけど,実際は高いんだよ」
今日は,いろんな山が遠望できました。伊吹山,御嶽山,乗鞍岳。このあたりが濃尾平野でもいちばん平で広々としているところなんでしょう。
今回,乗船客ひとりで乗ったわたしは,対岸の船着き場には降りずに戻ってきました。船着き場5mまでは寄ったのですが,そこで舟はUターンしました。
「あそこが船着き場だよ。向こうから来るときは,あそこに旗を立てるんだ。それを見て,迎えに行くんだ」
おじさんが教えてくれました。だからでしょう,対岸の岐阜県側には小屋も何もありません。
乗船中に簡単なアンケートを依頼されました。その項目の一つに「目的」という欄があり,「観光」に丸をつけました。それにしてもこの西中野渡船場,ほとんど実用性はないと思われます。わたしのような観光客もたくさんあるとは思えません。いったい何のために存続しているのでしょうか。
ただ,一見無駄のようですが,素敵な無駄だと思いました。
そのあとさらに木曽川堤防道路を北上して,一宮の「ツインアーチ138」まで行きました。上にのぼって濃尾平野を見て見ようと思ったからです。これだけ天気がいいと遠くまで見渡せるのではないかと期待しました。
ところが向かっている途中にわかに雲が出てきました。結局ツインアーチについたときにはすっかり曇り空になってしまったので,上にあがるのはパスしました。