朝4時15分は真っ暗
早く出立したいという気持ちの昂ぶりからか,3時半に目が覚めてしまいました。テレビを見ながら夜明けを待ち,夜明け少し前に出ました。
4時15分でした。
置き忘れたタオル
真っ暗のなか外に出たら,雨が降っていました。振っているとは思わなかったのでポンチョはリュックの奥深くに沈んでいます。
真っ暗のなかもう一度荷物を下ろしてポンチョを着ました。そのとき置き忘れがのがずっと首に巻いて使っていたタオルです。そのことに気づいたのは30分後,高速道路下で雨宿りしたときでした。ずっと使っていたタオルだったし,娘から渡された思い入れのあるタオルだっただけに残念でした。
雲辺寺へんろ道は荒れていました。
先週の台風の影響でしょう。山道は倒木などで荒れていました。
整備の跡
そのままになっている倒木もたくさんありましたが,本当に邪魔になる木は片付けてありました。太い木を切って横に除けてあるのをいくつか見ました。
さっそく山に入って整備してくれた人がいたわけです。たいへんな作業だっただろうし,ありがたいことです。
雲辺寺は雲の中
ポンチョは雨よけというより防寒具として活躍しました。雨はたしかに防いでくれますが,ポンチョのなかは汗びっしょり,雨だか汗だか分からない状態になってしまいます。
そうなるともう雨なんかはどうでもよくなり,むしろポンチョを脱いで雨ざらしになった方が心地よいときもあります。
でもここ雲辺寺は標高900m, しかも雲の中,雨より寒さがダメージでした。
歩いていたとき一度脱いだポンチョを屋根の下でもう一度着ました。
民宿岡田でいただいたおにぎりをほおばり,朝ご飯とポンチョで体が温まりました。
なかは汗でびっしょり濡れていますが,ほくほくとあたたまりいい気持ちになりました。
塩飴の接待
「コーヒーを沸かして待っていたんですけれど・・・」
そういって,コーヒーではなく塩飴を接待していただきました。夫婦で参拝に来たおへんろさんです。
「わたしたちはクルマで先に行きますが,・・・がんばってください」
そう言えば,雲辺寺の山門につく直前白いワゴン車がわたしを追い越していきました。他県ナンバーだったのでおへんろさんだろうと思い馳せましたが、たぶんあのクルマだったのでしょう。
下り道はどこも歩きにくい
今思えば下りでいちばんきつかったのは横峰寺の白滝奥之院ルートです。瓦礫の山道が長く続きます。しかも急なところが多く足をとられそうになったこともしばしばありました。急な下りが続くと膝を痛めます。
調子にのって歩いて痛めたのは久万高原での上り下りでした。横峰のときも膝を痛めたまま歩くことになってしまい,酷く苦しみました。
今回はその轍を踏まないように慎重に歩きました。慌てないでゆっくり一歩一歩。そうやって歩いたからかもしれませんが,雲辺寺の下りは横峰の下りほど難所とは感じませんでした。
焼山寺の下りがきついという人がいますが,わたしはそんなふうには思いませんでした。人それぞれで,だらだらと長く下るのが苦手な人がいるようです。
ウグイスとセミ
山上は盛んにウグイスが鳴いていました。雲辺寺の境内は下界では季節はずれのあじさいも盛りでした。山を下りてくるとウグイスがセミに変わりました。のどかなウグイスからせき立てるようなセミのジージー声に変わると下界のあわただしさや暑さも合わせてやってくるようでした。
丁石仏
讃岐に入ってから道端のお地蔵さんが急に増えました。
讃岐の人はとりわけ信仰心が厚いのかと思っていましたが, これは丁石仏というのだそうです。
丁石仏とは道しるべの役を果たし,一丁ごとに置かれる石仏です。だから連続しておかれ、数が多くなるわけです。
一丁はだいたい110mです。岡崎城から八丁の距離にあった味噌屋からお城のお殿様に届けられたのが「八丁味噌」です。
叱られました。
67番大興寺で,へんろルートをそのまま進み,裏からお寺に入ったところ,
「山門から入ってください。下までは無理ですか?」
そう言って叱られました。
山門まで行くには階段を下りて,また上がってこなくてはなりません。
元気なときならそんなにきつい階段ではありませんが,雲辺寺から9km余り,やっとたどりついた境内です。体力も気力もほとんど残っていませんでした。
作法とかしきたりがあるのは分かります。お寺さんとしては作法を大事にしたいのだろうということも分からないではありません。でも,わたしは無闇に作法に縛られ,強要されるのはいまいち受け入れられません。
お寺にはお寺の立場があるでしょうが,わたしにはわたしの思いがあります。そして,これはわたしのへんろであり,お寺のためにしているへんろではありません。お寺の作法に合わなかったかもしれませんが,ほっといてほしかったと思いました。
山門まで下りるつもりはさらさらありません。階段を3段ほど下りて,死角になったところにしばらく座って時間稼ぎをしました。
意外につらい67番から68番までの県道
雲辺寺の上り下りで体力を使い,受けたダメージがここに来て出てくるのかもしれません。
観音寺市の街中を歩くのが前回も辛かったことを思い出しました。昼を挟む時間帯になり,暑さもピークになってくたびれた身体を容赦なく襲います。
ドローン
遠く,田んぼの方から大きなエンジン音が聞こえてきました。何かと思ってみると,模型のヘリコプターで薬剤散布しているところでした。こういうのももうちょっとしたらドローンが使われるようになるのでしょうか。
削り取られたへんろマーク
観音寺市外に入ってへんろマークを見失い,道に迷いました。
よく見ると,へんろマークが削り取られています。財田川を渡るちょっと手前からへんろマークがなくなり,交差点をどっちに行っていいか分からなくなりました。
削り取られている理由は何なのでしょうか。「美観を損ねる」という理由かもしれません。わたしたちにとってはありがたい印ですが,快く思わない人もいるに違いありません。
今日はあまり余裕がありません。
70番を越えて三豊市高瀬までが今日の予定です。あまりゆとりがありません。
観音寺と神恵院のふたつのお寺のお参りもさっさと済ませて次を急ぎました。前回見に行った琴弾公園の銭形砂絵も今回はパスしました。
いろんな寄り道をしてゆっくり歩くというおへんろを
している人もいますが,わたしのへんろは違います。
最近読んだ本『だいたい四国八十八ヶ所』の著者は,距離を競うようにして歩くおへんろを「健脚自慢」と避難しています。せっかく四国に来たのだから,いろいろな四国を見聞しなければもったいない,というわけです。
わたしは,あちこちに寄ったり,気を散らしたりするのはあまり好きではありません。でも健脚を競っているわけでもありません(たくさん歩けたときはうれしいから,そういう気持がまったくないわけではないかもしれません)。ただ,「歩くことに集中したい」という気持で歩いています。
景色や面白い体験より歩くことを大切にしています。
しかも,今日はあまり余裕がないので,いつも以上にささと歩きました。
70番山本寺も
さっさとお参りを済ませました。着いたのが3時前でした。暑さも疲労もピークに達しています。休憩だけはしっかりとりました。
山本寺は四国のお寺のなかでは珍しく党の聳える立派なお寺です。
境内も落ち着いていてゆっくり休むことができます。
ここから残り5kmあまり,もっとも疲れが来る道のりです。しっかり体力と気力を快復して再出発です。出立は3時半でした。
元気な中・高校生
中学生・高校生はすれ違ったとき向こうから元気よく挨拶してくれます。わたしもできるだけこちらから先に,と思いますが,中・高校生に負けることしばしばです。
ちょっと難しいな,と思うのが,自転車に乗った人とすれ違うときに挨拶するタイミングです。
あまり遠くからでは聞こえません。
そうかといってすれ違う寸前だと,相手が挨拶を返すタイミングがなくなってしまいます。自転車は歩きと違って速いので,「こんにちは」の「は」と行ったときにはもうすれ違ってしまっていたりします。そういうときはちょっと間抜けのような感じになります。
のこり2kmほどのところにあったコンビニでアイスクリームを食べました。暑いときのへんろにとっては何よりのごちそうです。